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不利益取扱いとは

Last Updated on 2023年9月30日 by

不利益取扱いとは

労働者に対する「不利益取扱い」とは、使用者が、法令で定められている権利を行使する労働者に対して、その権利の行使を妨げるような扱いをすることをいいます。

各法の禁止規定

労働基準法

労働基準法には、労働基準局への申告と有給休暇について規定があります。

労働基準法第百四条 
② 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

「前項の申告」というのは、労働基準法違反の事実を行政官庁又は労働基準監督官にする申告です。

労働基準法第百三十六条 (略)有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

育児介護休業法

育児介護休業法は、詳細に不利益取扱いについて規定しています。

以下のことを理由に、労働者に対して不利益取扱いをすることを禁止しています。

□ 育児休業を取ろうとすること、または取ったこと(第10条)
□ 介護休業を取ろうとすること、または取ったこと(第16条)
□ 子供の看護休暇を取ろうとすること、または取ったこと(第16条の4)
□ 介護休暇を取ろうとすること、または取ったこと(第16条の7)
□ 所定労働時間外の労働をしなかったこと(第16条の9及び第16条の10)
□ 法定労働時間外の労働をしなかったこと(第18条及び第18条の2)
□ 深夜に労働をしなかったこと(第20条及び第20条の2)
□ 所定労働時間を短縮したこと(第23条及び第23条の2)

このように、育児介護休業法において認められた権利を行使したことに対して不利益を与えることを禁止しています。

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男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法は第9条で以下に挙げられることを理由に、女性の労働者に対して不利益な取扱いをすることを禁止しています。

□ 妊娠又は出産したこと。
□ 妊娠中や出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、または受けたこと。
□ 坑内業務・危険有害業務に就けないこと、就かないことを申出、または就かなかったこと。
□ 産前休業を請求または休業したこと、産後に就業できないこと、または産後休業したこと。
□ 妊娠中の女性が軽易業務への転換を請求、または転換したこと。
□ 妊産婦が時間外・休日・深夜に労働しないことを請求、または労働しなかったこと。
□ 育児時間を請求、または取得したこと。
□ 妊娠または出産に起因する症状により労働できないこと、労働できなかったこと、または労働能率が低下したこと。

公益通報者保護法

公益通報者保護法には次の規定があります。

公益通報者保護法第五条 (略)事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをしてはならない。

労働者が公益通報したことを理由に不利益な取扱いをしてはならないという規定です。

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雇用保険法

雇用保険法には次の規定があります。

雇用保険法第七十三条 事業主は、労働者が第八条の規定による確認の請求又は第三十七条の五第一項の規定による申出をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

具体的には、労働者が雇用保険の被保険者になったことなくなったことについて確認を取ったこと、そして、高年齢被保険者の特例申し出を理由に不利益に取り扱うことを禁止しています。

労働組合法

労働組合法ではつぎのように不利益な取扱いを禁止しています。

労働組合法第七条 使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること(略)

不利益取扱いになる取り扱い

どういう取り扱いが「不利益取扱い」になるかについて厚生労働省の平成21年第509号の告示に以下のような例が記載されています。

これは、「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」なので育児介護休業法関連です。

□ 解雇すること
□ 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
□ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
□ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
□ 自宅待機を命ずること
□ 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は 所定労働時間の短縮措置等を適用すること
□ 降格させること
□ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
□ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
□ 不利益な配置の変更を行うこと
□ 就業環境を害すること

男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の違反の要件となっている「妊娠・出産、育休等を理由として」とは、妊娠・出産、育児休業等の事由と不利益取扱いとの間に「因果関係」があることを指します。妊娠・出産、育児休業等の事由を「契機として」不利益取扱いを行った場合は、原則として「理由として」いる(事由と不利益取扱いとの間に因果関係がある)と解されて、法違反と判断されます。

ならない場合

厚生労働省は、各都道府県労働局雇用均等室長宛に発出した通達(平27・3・27雇児雇発0327第1号、雇児職発0327第2号)において、妊娠・出産・育児休業等を契機としていても、法違反ではないとされる例外を記載しています。

1「業務上の必要性から不利益取扱いをせざるを得ず、業務上の必要性が、当該不利益取扱いにより受ける影響を上回ると認められる特段の事情が存在するとき」

2「労働者が同意している場合で、有利な影響が不利な影響の内
容・程度を上回り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者なら同意するような合理的な理由が客観的に存在するとき」

この通達には、もう少し具体的な例も記載しているので、関心がある方は検索してください。

いずれにしても、「特段の事情」「合理的な理由が客観的に存在」の解釈は大変難しいので、実際の対応にあたっては弁護士等の専門家に相談したほうがよいでしょう。

労働者から、事業主の不利益取扱いについて労働基準監督署または雇用均等室に相談があったときは、雇用均等室は、妊娠・出産・育児休業等を「契機として」行われた不利益取扱いであるか等を、労働者からの聴取、事業主からの報告徴収をして、例外に該当するかどうかを判断します。

「例外」に当たらないと判断すれば、助言・指導・勧告され、是正されない場合は企業名の公表もあります。

ハラスメントとの違い

不利益取扱いは事業主が行う行為です。一方、ハラスメントは上司や同僚による行為です。たとえば、妊娠・出産を理由に解雇や降格を行うのは不利益取扱いです。上司が産休や育休の取得を拒んだり、精神的に圧力をかけたりする行為はハラスメントです。

事業主は、上司や同僚が職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とするハラスメントをすることがないよう、防止措置を講じなければなりません。

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