Last Updated on 2023年11月26日 by 勝
キャッシュ払いが原則
賃金は、通貨で支払わなければならない、と労働基準法に定められています。
労働基準法第24条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
通貨というのはキャッシュ払いということです。
条件付きで銀行振込が可能
通貨で払うのが原則ですが、一定の条件のもとに給与振り込みが認められています。
労働基準法施行規則第7条の2 使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について次の方法によることができる。
一 当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み
二(以下略)
銀行等のほかに、金融取引業者(証券会社、投資信託委託会社など)、資金移動業(○○ペイなど)の口座も振込先として認められています。
関連記事:給与のデジタル払い
労使協定が必要
給与を銀行振込等で支払うには、労働者本人の同意が必要です。その他に、通達で求められている条件もあるので、まとめて説明します。
1.労使協定を結ぶこと
2.個々の労働者の同意を得ていること
3.労働者が指定する本人名義の口座に振り込まれること
4.賃金の全額が、所定の賃金支払日に払い出しができる状況にあること
1について、
給与を振込払いすることについて、労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者と書面による協定を結ぶ必要があります。この協定は労働基準監督署に届け出る必要はありません。
→賃金の口座振込に関する労使協定のサンプル
2について、
労使協定があっても、個々の労働者の同意も必要です。採用のときに、振込銀行と口座番号、名義を書面で届けてもらう書式に、「私の賃金は下記の口座に振込をお願いします。」という文言を入れると良いでしょう。
→賃金の口座振込に関する同意書のサンプル
3について、
振込先は、必ず本人名義の口座でなければなりません。仕送りということで依頼されても家族名義の口座に振り込んではいけません。
4について、
銀行等への手続きは前日までに済ませておき、給料日当日に払い出せるようにしておきましょう。当日の昼くらいには入る、という扱いは違反です。
どうしても現金でほしいという申し入れがあれば、法律通りに現金で渡すしかありません。ただし、事務手続き上の不便は大きいですから説得することは問題ありません。強要にならないよう注意して下さい。
退職金の場合
退職金も賃金ですから、通貨払いの原則が適用されます。毎月の給料と同様の手続きをしておくことで、銀行振込払いが可能です。
小切手による支払は、給与の場合は認められませんが、退職金の場合は小切手等で支払うことができます。以下がその根拠です。
労働基準法施行規則第7条の2
・・・・・。使用者は、労働者の同意を得た場合には、退職手当の支払について前項に規定する方法のほか、次の方法によることができる。
具体的には次の3つの方法です。
① 銀行等によつて振り出された当該銀行等を支払人とする小切手
② 銀行等が支払保証をした小切手
③ 郵便為替
賃金の現物給付
労働協約に現物支給の定めがある場合には、現金ではなく、現物での支給が認められます。労働協約は労働組合との協定ですから、労働組合の無い事業場ではこの扱いはできません。労使協定では認められません。
通勤手当を定期券で支給することも通勤手当の支払ではなく現物給付にあたります。
資金難などの経営上の理由で自社製品で給与に代える場合も働協約が必要です。なお、生活に使いみちがなく、換金もできないようなものは給料の支給とは認められません。
会社事務入門>賃金・給与・報酬の基礎知識>賃金についての法規制>このページ