Last Updated on 2023年9月12日 by 勝
遅刻分を終業後に勤務させることについて
遅刻した時間を、終業時刻後の残業時間で埋め合わせさせることはできるのでしょうか?
遅刻をすると、その日の仕事が滞るので、いつもより帰りが遅くなる可能性が高いと思います。
その場合、一般的には遅刻分は賃金カット、残業時間には割増賃金を払う、と別々の扱いをすることが多いと思いますが、1時間遅刻して1時間残業すると、割増分を得をすることになり、他の従業員に対して不公平になります。
このような場合について、厚労省の通達がでています。
厚労省通達昭29.12.1基収第6143号
例えば労働者が遅刻をした場合、その時間だけ通常の終業時刻を繰下げて労働させる場合には、1日の実労働時間を通算して法第32条又は第40条の労働時間を超えないときは、法第36条第1項に基づく協定及び法第37条に基づく割増賃金支払の必要はない。
つまり、遅刻した時間を終業後の時間で埋め合わせて、その部分について割増扱いをしないことは問題ありません。
注意点
トータルの労働時間が法定労働時間を超える場合は別で、超えた部分について割増賃金が必要です。
就業規則の規定が「所定の終業時刻を超える時間外勤務に対し割増賃金を支給する」という表現であれば、文言通りに解釈して遅刻分は賃金カット、残業時間には割増賃金と分ける必要があるでしょう。
また、遅刻はしたものの定時で帰りたいと希望する場合は、遅刻を理由に終業時間後の労働を強制することはできません。遅刻部分の賃金カットのみで対応します。
残業分を翌日短時間勤務することについて
前日2時間の残業をしたので、翌日は2時間遅く出社する、または、2時間早くあがる。という場合について検討します。上述のケースと似ていますが、違うので注意してください。
労働時間としては同じですが、前日の2時間は残業(時間外勤務)ですから、割増賃金が必要です。翌日の2時間は割増賃金が適用されない時間です。これだと労働者が不利です。
さらに、会社都合で一定時間の勤務をさせないということになりますから、厳密に言えば、その時間帯は休業手当(労働基準法第26条)の支給対象になります。
よって、安易にこのような方法をとってはいけません。
なお、フレックスタイム制度を適用していればこのように翌日などでの調整は合法です。フレックスタイム制度においては、使用者側の指示ではなく、労働者側が自分の意志で自由に労働時間を設定できることから、各労働日にまたがる労働時間の調整が認められています。
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また、労働基準法第37条第3項による代替休暇制度を使えば、残業代を有給休暇に替えることができます(月60時間を超える時間外労働の割増賃金に限る)。
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