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労働時間

労働時間管理の基本

Last Updated on 2025年6月14日 by

労働時間の定義

労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。休憩時間や待機時間なども、実質的に労働から離れられない状態であれば労働時間に含まれる場合があります。

    法定労働時間

    労働時間の上限は労働基準法に定められています。原則として、1日8時間、1週40時間です。

    法定労働時間を超えて労働させることはできません。

    関連記事:法定労働時間は法律上の上限労働時間です

    所定労働時間

    各会社が就業規則等で定めている労働時間です。法定労働時間内で設定されます。

    実労働時間

    実際に労働に従事した時間です。

    休憩時間

    労働時間の途中に与えられる、労働者が労働から離れることができる時間。労働基準法により、6時間を超える勤務で45分以上、8時間を超える勤務で1時間以上の休憩を与えなければなりません。休憩時間は労働時間には含まれません。

    みなし労働時間

    実際の労働時間を算定することが困難な業務の場合に、特定の時間を労働したものとみなす制度です。

    事業場外労働に関するみなし労働時間制

    営業職などで、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な場合に適用されます。

    裁量労働制

    専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制があり、業務の性質上、労働時間の配分を労働者の裁量に委ねる場合に適用されます。

    時間外労働(残業)

      労使協定(36協定)を締結して労働基準監督署に届け出することで、一定の範囲内で法定労働時間を超えて労働させ、あるいは法定休日に労働させることができます。

      関連記事:時間外労働の手続き

      時間外労働の上限規制

      36協定を締結しても、時間外労働には上限が設けられています。原則として月45時間、年360時間です。特別条項を設けた場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内、単月100時間未満などの上限があります。

      割増賃金

      時間外労働に対しては、通常の賃金に割増率を乗じた賃金を支払う必要があります。

      ・時間外労働:25%以上
      ・深夜労働(午後10時~午前5時):25%以上
      ・法定休日労働:35%以上
      ・時間外労働が月60時間を超える場合:50%以上
      ・時間外労働+深夜労働:50%以上
      ・法定休日労働+深夜労働:60%以上

      休日

      法定休日

      労働基準法により、使用者には毎週少なくとも1回の休日、または4週間を通じて4日以上の休日を与える義務があります。

      法定休日に労働させることはできません。法定休日をとらせるだけでは週40時間労働の限度を守ることが難しいので別途所定休日を設定するのが一般的です。

      関連記事:法定休日

      所定休日

      各会社が就業規則等で定めている休日です。法定休日以外に、土日祝日などを所定休日とする会社が多いです。

      代休

      休日労働を行わせたときは、原則として別の労働日に休日を与えなければなりません。別の日に休日を与えても割増賃金の支払い義務が生じる場合があることに注意しましょう。

      振替休日

      あらかじめ休日とされていた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とすること。事前に振り替えることで、労働日の変更となり、割増賃金の支払い義務が生じない場合があります(ただし、週40時間を超える場合は時間外労働となるため、割増賃金は発生します)。

      労働時間管理の重要性

      労働時間管理は以下の点から重要です。

      ・労働基準法を遵守し、企業としての社会的責任を果たすため。

      ・適切な労働時間管理により、サービス残業の発生を防止し、従業員の健康とモチベーションを維持するため。

      ・長時間労働による健康障害や過労死を未然に防ぐため。

      ・労働時間を適正に管理することで、業務の効率化を促し、生産性を向上させるため。

      ・労働時間に関するトラブルを未然に防ぎ、良好な労使関係を築くため。

      労働時間の把握義務

      使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録する義務があります(労働安全衛生法第66条の8の3)。この義務は、特に長時間労働による健康障害のリスクが高い労働者だけでなく、すべての労働者に適用されます。

        確認・記録方法の例

        以下の方法で労働時間を管理します。従来から多いのはタイムカードによる管理ですが、実労働時間の把握が難しいので勤怠管理システム等の利用が増えてきています。

        ・タイムカード
        ・ICカード
        ・勤怠管理システム
        ・パソコンの使用時間の記録
        ・使用者による現認
        ・自己申告制(ただし、自己申告が実態と異なる場合には、使用者が実態を把握し、必要な修正を行う義務があります)

        勤怠管理システム

        勤怠管理システムには、アラート機能がついているものがあります。そして、多くの場合は、アラートを様々に設定することができます。

        例えば、残業時間数を自動判定して、規定の残業時間数に近づいたときに、本人と上司等にメール等でアラートを送ることができます。

        申請が出されていない残業に対するアラートを発することもできます。

        こうしたアラート機能を活用する事により、法令違反になる働き方を防止することができ、迅速な対処が可能になります。

        時間外労働の限度を超えない対策

        従業員に注意を促す

        従業員の自覚が大事です。従業員が自分の労働時間の限度を知らないことが多いので、職場ごとに、その職場に適用される時間外労働の限界を周知しなければなりません。

        36協定では、1日、1か月、1年当たりの時間外労働の上限を定めます。1日の限度を守っているとしても、1か月、1年当たりの限度を超えれば違反になることを理解してもらう必要があります。

        上司が注意を払う

        従業員が自分の労働時間の限度を守ろうとしても、業務が忙しくてやむを得ず長時間労働になることがあります。

        時間外労働が常態的になっている従業員については、上司が仕事のやり方を指導し、応援を入れ、特定の人に業務が集中しないように配分しなければなりません。

        業務の配分で解決しない場合は、要員の不足がないか検討し、増員や一時的応援を他部署や上層部に要望する必要があります。


        会社事務入門時間外労働の定義・三六協定・上限規制・割増賃金の計算方法>このページ