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安全衛生管理

「特定の危険業務」には、専門の資格が必要です!〜労働安全衛生法の就業制限〜

Last Updated on 2025年6月17日 by

有資格者以外の就業制限

会社が行う様々な業務の中には「専門的な知識や技術がないと、作業する人自身や周りの人に大きな危険が及ぶ可能性がある」業務があります。例えば、クレーンを操作する、危険な化学物質を扱う、高所で作業するなどです。

このような「特定の危険業務」を、何の知識もない人が担当してしまうと、大きな事故につながりかねません。そこで、労働安全衛生法という法律が、このような事故を防ぐために、有資格者以外の「就業制限」というルールを定めています。

「就業制限」とは、「特定の危険な業務については、決められた資格を持つ人しかその仕事をしてはいけませんよ」というルールです。

具体的なイメージとしては、以下のような形になります。

  1. どんな業務が「特定の危険業務」なのか?
    • 法律で細かく定められています。例えば、以下のような業務が含まれます。
      • クレーン、デリック、移動式クレーンなどの運転
      • フォークリフトの運転
      • ボイラーの操作
      • 特定化学物質や高圧ガスなどの取り扱い
      • 玉掛け(クレーンで荷物を吊り上げる際に、荷物にワイヤーをかける作業)
      • 足場の組立て
      • 建設機械の運転
      • 酸素欠乏危険作業(酸素が少ない場所での作業)
      • X線装置などの放射線業務
    • これらは一部です。他にも多くの業務が指定されています。
  2. どんな資格が必要なの?
    • 業務の種類によって、必要な資格が異なります。大きく分けて以下の3種類があります。
      • 都道府県労働局長が交付する「免許」を受けた者
        • 非常に危険度が高い業務(例:ボイラー技士、クレーン・デリック運転士など)に必要です。これは国家資格のようなもので、試験を受けて合格し、免許を取得する必要があります。
      • 「技能講習」を修了した者
        • 比較的頻繁に行われる業務で、専門的な知識と実技が必要な業務(例:フォークリフト運転技能講習、玉掛け技能講習、足場の組立て等作業主任者技能講習など)に必要です。指定された機関で講習を受け、修了試験に合格すると修了証が交付されます。
      • その他、厚生労働大臣が定める「特別教育」を修了した者
        • 比較的小規模な作業や、特定の機械の操作など、技能講習よりもさらに範囲が限定される業務(例:アーク溶接等特別教育、自由研削といし特別教育など)に必要です。これは会社や指定機関で比較的短時間の教育を受ければ修了できます。

関連記事:労働安全衛生法に基づく免許や技能講習等

なぜこのようなルールがあるのか?

この「就業制限」というルールは、重大な労働災害を未然に防ぐために存在します。

  • 作業員の安全を守るため: 資格を持たない人が危険な機械を操作したり、危険な物質を扱ったりすれば、操作ミスや不注意によって、自分自身が大怪我をしたり、命を落としたりする可能性があります。
  • 周囲の人々の安全を守るため: 危険な作業は、作業している本人だけでなく、周りにいる同僚や関係者にも危険を及ぼす可能性があります。
  • 企業の責任を果たすため: 企業は、社員が安全に働ける環境を提供する義務があります。この就業制限を守ることは、その義務の一部です。もし、資格のない社員に特定の危険業務を行わせて事故が起きた場合、罰則(罰金など)が科せられるだけでなく、社会的な信用も大きく失うことに留意しましょう。

会社はどう対応すればいいのか?

以下の点に注意してください。

  1. 自社の業務洗い出し: 会社で行っている業務の中に、労働安全衛生法で就業制限が定められている「特定の危険業務」がないか、しっかりと確認しましょう。
  2. 必要な資格の把握: 特定の危険業務がある場合、その業務にはどのような免許、技能講習修了、特別教育修了が必要なのかを正確に把握しましょう。
  3. 資格の取得支援: 該当業務を行う社員には、必要な資格を確実に取得させましょう。会社として、講習費用や受講時間の確保など、資格取得を支援することも重要です。
  4. 資格の有無の確認: 新しく採用する人や、部署異動などで新たに特定の危険業務を担当させる場合は、必ず必要な資格を持っているか、免許等の原本を提示させて確認しましょう。資格がなければ、その業務に就かせてはいけません。
  5. 記録の管理: 誰が、いつ、どのような資格を取得したのか、修了証の写しなどを含めて、いつでも取り出せるように、見やすいように管理しておきましょう。
  6. 定期的な再確認: 定期的に就業制限の対象業務や必要な資格について再確認することが大切です。法律が改正されたり、業務内容がいつの間にか変わっていることがあるからです。

簡単に言えば、「この業務は専門知識がないと危ないから、ちゃんとした資格を持った人じゃないとやってはいけません!」というルールが「就業制限」であり、そのルールを守ることが、社員の安全と会社の信頼を守るために非常に重要である、ということです。

もし、自社の業務をみて「この業務は該当するのかな?」と疑問に思うことがあれば、上司や専門家(社会保険労務士など)に相談したり、厚生労働省のウェブサイトなどで情報を確認してください。


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