カテゴリー: 経理の事務

  • 棚卸しとは?棚卸の目的と具体的な手順を解説

    棚卸しとは?棚卸の目的と具体的な手順を解説

    棚卸とは

    棚卸(たなおろし)とは、簡単に言えば、決算に際して商品などの在庫数と状態を確認し記録する作業です。

    棚卸の目的は、①売上原価を把握するため ②在庫品の状態を確認するため ③紛失や記帳漏れを見つけるためなどです。

    売上原価を把握する

    決算では売上原価を求めなければなりません。売上原価は次の式で求めます。

    売上原価=期首棚卸高−当期仕入高−期末棚卸高

    期首と期末の棚卸高が分からなければ売上原価を求めることができません。そのため、決算においては棚卸をやらなければなりません。

    在庫品の状態を確認する

    商品の価値は時間とともに劣化するのが一般的です。定められた有効期限などが過ぎれば商品価値はゼロになります。品質が変わらなくても包装が破れて商品価値が失われることもあります。帳簿上に存在しても、実際には価値が減少してしまっている商品を見つけ出すことも棚卸の目的の一つです。

    紛失や記帳漏れを見つける

    帳簿上はあることになっていても実際には商品が見当たらないこともあります。逆に、帳簿上にない商品が倉庫に存在していることもあります。こうしたことは、ほとんどの場合は事務的なミスによって生じます。

    ミス以外では顧客や従業員による窃盗などの不正も考えられます。数が合わない場合に安易に帳尻合わせをしてはいけません。可能な限り食い違いが生じた時期や原因を追求して再発防止に取り組みましょう

    棚卸の対象

    棚卸とは会社の棚卸資産を対象にして行います。
    棚卸資産とは主に①商品・製品 ②仕掛品 ③原材料 ④貯蔵中の消耗品です。

    商品・製品
    商品や製品とは、販売することを目的として保有している物品のことです。

    仕掛品
    仕掛品とは、販売することを目的として製造中の未完成の物品です。

    原材料
    原材料とは、製品を生産するための材料などです。

    消耗品
    消耗品とは、販売および一般管理活動において消費される物品です。梱包材料、事務用品などが該当します。一般的には購入した時点で経費処理しますが、決算に際しては、使わずに残っている消耗品は「貯蔵品」として棚卸資産に計上しなければなりません。

    棚卸の時期

    棚卸は決算に伴う作業なので、一般的には年に1回の決算月に行います。半期ごとの決算を行っている会社であれば年2回、四半期決算を行っている会社であれば年4回、月次決算を行っている会社であれば年12回になります。

    帳簿棚卸と実地棚卸

    棚卸には、帳簿棚卸と実地棚卸があります。帳簿棚卸とは、帳簿で在庫数を把握する棚卸です。実地棚卸は、実際に商品を目で見て確認しながら行う棚卸です。決算に伴う棚卸は実地棚卸が必要です。

    例えば月次決算のように法的なものでなく経営上の都合で行う決算であれば、帳簿棚卸だけで行う場合もあります。

    棚卸の手順

    準備

    棚卸の実施日時を決めて関係者に通知します。実地棚卸は商品の動きを止めた方が効率的なので休日や夜間に行なっている会社が多いようです。

    棚卸に必要な用品を準備します。一般的には、商品の数や状態を書き込む用紙(棚卸原票)やバーコードリーダーなどを用意します。

    棚卸原票はできれば複写式の個票が望ましい。

    担当者と担当エリアを指定します。エリアごとに2名1組とします。その商品を熟知している方がスムーズに作業ができるので、日常の担当者に棚卸も担当させがちですが、内部牽制が機能しないので避けましょう。

    開始

    検査

    1人が商品名、数量、商品状態などを目視でチェックして読み上げます。もう1人が聞き取って棚卸原票にボールペンで記載またはデジタルツールに入力をします。

    商品に棚卸原票の一票を貼付します。

    担当エリアの全ての商品の棚卸が終わったら、数え漏れがないか点検して棚卸原票の一票をまとめて、集計担当者に回付します。このとき、商品に添付した棚卸原票の一票は最終的に棚卸作業が終了するまでそのままにしておきます。

    集計

    回収された棚卸原票に記載されている数量を集計表(予め帳簿に基づいて商品名や数量が記載されている)に転記します。

    実地棚卸数と帳簿残高とに差異がある場合には、もう一度現品を調査します。再調査は最初に棚卸原票を提出した担当者ではなく、別の2人1組にやってもらいます。

    棚卸に間違いがない場合は、過去の売上記録や商品受払記録により差異の原因を追求します。

    結果に基づいて過不足数を商品受払台帳に記載、または入力して帳簿を修正します。摘要は「商品過不足」と記載します。

    修正承認は、通常は棚卸責任者の判断で行いますが、厳密な管理を要する商品等の場合は、より上位の管理者の承認を要する仕組みにしましょう。有害物質の場合には保健所等への届け出が必要な場合もあります。

    評価損の計上

    棚卸において、商品価値が低下した商品や無価値になった商品が見つかることがあります。これらの商品を従来の価格にしておくことは実態を反映していないことになります。

    商品価値が低下している場合は適正な価格に修正します。まったく商品価値が無くなった商品については在庫から除外します。

    関連記事:在庫商品(棚卸資産)を処分するときの注意点

    これらの処分はその妥当性が証明できなければ、後日の税務調査で否認されて修正申告や重加算税の対象になることがあります。一点ごとに、商品の写真付きで評価減や廃棄に至った検討の経緯を残しておきましょう。また、廃棄の事実も証明できなければなりません。廃棄業者に依頼する場合は商品明細付きの処分引受書類を残しましょう。

    監査

    内部監査担当者が、棚卸実施場所を偏りないよう巡回し、実施状況を検査、指導することがのぞましい。内部監査担当者は、一部の商品についてランダムにテストカウントを実施することが望ましい。

    以上が一般的な棚卸の手順です。

    保存期間

    棚卸表は7年間の保存が義務付けられています。棚卸表の正確性を担保するために棚卸原票も保管しましょう。


    会社事務入門経理課はどんな仕事をしているの?わかりやすく解説!>このページ

  • 預り金 勘定科目

    預り金 勘定科目

    預り金とは

    預り金勘定は、何かの目的でお金を預かる時に使用する勘定科目です。将来的には現金等(資産)が減少するものであるため負債に分類されます。また、長く預かる性質のものではないので、1年以内に支払いが終わる流動負債に分類されます。

    給与計算のときに使われることの多い勘定科目です。

    社内旅行積立金などのように、1年を超えて預かることが予定されている場合は固定負債に分類します。

    預り金の仕訳

    【例1】給与から源泉所得税と社会保険料を控除して、手取り額を普通預金から振り込んだ。

    借方(左側)給与 貸方(右側)普通預金と預り金

    【例2】従業員から預かった源泉所得税を現金で納付した。

    借方(左側)預り金 貸方(右側)現金

    【例3】社会保険料が普通預金から引き落とされた。(うち、半分は従業員負担分)

    借方(左側)預り金と法定福利費 貸方(右側)普通預金

    注意点

    預り金勘定がマイナスになることもある

    従業員から預かった雇用保険料は労働保険料として納付します。労働保険料の支払いは通常は年1回です。従業員からの雇用保険料は毎月差し引くので、労働保険料の納付前には預り金勘定がマイナスになる場合があります。

    年末調整で税金の過不足を精算したときに、預かっている所得税より本人に還付すべき金額が多くなった場合にも預り金勘定がマイナスとなります。この場合、本来は税務署に手続きすれば戻ってくるお金なので未収入金という勘定科目に振り替えます。ただし、実務的には税務署から返金してもらうのではなく、翌年1月以降に税務署に納付する源泉所得税額から差し引いて減額納付するのが一般的です。

    預り金勘定のマイナスは事務ミスによる場合もあります。給与天引きを忘れたり、勘定科目違いなどの場合です。プラスにしてもマイナスにしても差異の内訳が把握できていれば良いのですが、漫然と処理していると事務ミスが紛れ込んでいることがあるので注意しましょう。

    預り金の納付

    預り金の納付時期を忘れないようにしましょう。納付が遅れると延滞金がかかることがあります。納付日を忘れないようにスケジュール管理し(なるべく自動引落などを利用し)、支払い後には預り金勘定で不整合がないか確認しましょう。

    源泉所得税や住民税は、原則として、給与を支払った月の翌月10日までに納めなければなりません。 ただし、給与の支給人員が常時10人未満の場合は、源泉徴収した所得税等を、半年分まとめて納めることができる特例があります。

    また、健康保険や厚生年金保険の保険料については、毎月の給料及び賞与から従業員負担分の保険料を差し引いて、事業主負担分の保険料と併せて、翌月の末日までに納付しなければなりません。

    納付状況をすばやく把握するために「社会保険料預り金」、「預り源泉所得税」、「預り住民税」などと預り金勘定に補助科目を設定することもあります。

    類似の勘定科目

    類似科目に立替金や前受金などがあります。

    立替金とは、従業員や取引先などが負担すべきお金を会社が一時的に立て替えて支払った時に使う勘定科目です。預り金は従業員等のお金ですが、立替金は会社のお金です。

    前受金とは、得意先への商品やサービスの提供が終わっていない段階でお金を先に受け取ったときに使う勘定科目です。前受金は先々売上になります。

    不動産の入居者から預かる敷金や保証金は、預り保証金という勘定科目で処理します。


    会社事務入門給与計算のやり方給与計算の流れ>このページ

  • 買掛金を適切に管理する方法

    買掛金を適切に管理する方法

    買掛金とは

    買掛金とは、商品やサービスを掛取引で仕入れをしたときに使う勘定科目です。

    掛取引とは、売り買いのときに、その場で現金等で支払いを済ませるのではなく、一定期間内の取引を後日まとめて支払う取引です。

    掛取引のうち、仕入を行った側が仕入れの金額を計上するのが買掛金という勘定科目です。

    買掛金が発生する取引

    ① 商品を販売するために卸売会社から商品を掛けで仕入れる
    ② 商品を製造するために卸売会社から原材料を掛けで仕入れる

    掛けですからお金は動いていませんが、商品は動いています。商品が自分のところに動いてきたということは、取引相手に支払わなければならない金額が発生したということになります。その金額が買掛金です。

    家庭でつける家計簿などではお金を払っていなければ記載しないことが多いと思いますが、事業をやっている場合は、お金を支払ったときだけでなく、買掛金が発生したときも帳簿に記載しなければなりません。

    未払金、未払費用との違い

    買掛金とよく似た勘定科目に「未払金」「未払費用」があります。

    未払金とは、消耗品の購入費や固定資産の購入代金を、あとから支払う約束をしたものです。買掛金は仕入の購入代金であるところが違います。

    未払費用とは、サービス(継続的に発生する契約の役務)への対価のうち、まだ支払いが行われていないものを指します。保険料や水道、電気代、従業員の給与などが該当します。

    買掛金の仕訳

    仕入れたとき

    仕入の取引が発生したときは、借方に「仕入れ」、貸方に「買掛金」を記載します。

    借方科目金額貸方科目金額
    仕 入100,000円買掛金100,000円

    支払ったとき

    支払い期日になり、仕入れ代金を銀行へ振り込んだ場合は借方に「買掛金」、貸方に「預金」として仕訳を行います。

    借方科目金額貸方科目金額
    買掛金100,000円預 金100,000円

    買掛金と売掛金を相殺するとき

    自社の売上げ先が仕入先でもある場合、自社が売り手となり発生した「売掛金」で負債の「買掛金」を相殺することもできます。こうした取引は相手の取引先へ同意を得る必要があります。

    借方科目金額貸方科目金額
    買掛金100,000円売掛金100,000円

    返品をしたとき

    仕入れたものを返品した場合は、買掛金から返品した分の金額を減らします。返品した場合は「仕入戻し」「仕入値引き」といった勘定科目を使うこともあります。これまでと同じやり方をします。

    借方科目金額貸方科目金額
    買掛金100,000円仕 入100,000円

    買掛金元帳への転記

    買掛金元帳は、取引先との買掛金の残高を管理する補助簿です。取引先ごとに作成し、買掛金の金額を記録します。

    一般的には会計ソフトで処理するので、買掛金の仕訳入力をした時点で買掛金元帳へ転記されます。

    差異チェック

    帳簿に記載されている買掛金残高と取引先からの請求金額が一致するのが望ましいのですが、締切時期の違い等で食い違いが発生します。

    不一致には、 

    • 金額に誤りや漏れがある
    • 一部の取引が計上されていない
    • 一部の取引を重複して記帳している

    などがあります。原因を究明して正しい金額を支払わなければなりません。社内の仕入担当者と協議しても分からなければ相手先に問い合わせする必要があります。

    回転期間

    買掛金が発生してから支払いが終わるまでの期間を回転期間と言います。

    回転期間は、仕入れに関する資金繰り状況をはかる指標として用いられます。自社の買掛金回転期間を継続して把握して、変化が見えてきたらその理由を調べましょう。可能であれば地域や業界の平均的な買掛金の回転期間を調べて参考にしましょう。

    日数の場合
    買掛金残高÷(売上原価÷365)=買掛金の回転期間(日)

    月数の場合
    買掛金残高÷(売上原価÷12ヶ月)=買掛金の回転期間(月)

    回転期間が長くなるのは支払いを遅らせていることにるので資金繰り的には良いのですが、取引先からは支払いが悪い相手先と認識されるおそれがあるので、必ずしも良いことではありません。


    会社事務入門営業業務課はどんな仕事をしているの?わかりやすく解説>このページ

  • 領収書の書き方

    領収書とは

    領収書とは、商品やサービスを提供して代金を受領したときに、確実に代金を受け取ったことを証明するために発行する文書です。

    民法第486条は、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。」と定めています。受取証書とは領収書のことです。代金を支払った者は領収書の発行を請求できるのが原則です。

    印紙税法では、金銭または有価証券の受取書と言います。金銭を支払ったという事実を証明するための証憑書類です。

    レシートも、領収日付、売上代金に係る金額、発行元、受領した事実が認められる表記があるものは領収書として取り扱われます。

    領収書の記載事項

    あて名

    あて名に記載するのは支払った側の企業名などです。支払者の氏名または企業名を正式名称で記載します。

    例えば、(株)と省略せずに株式会社と記入し、前株(会社名の前にある株式会社)と後株(会社名の後ろにある株式会社)にも注意しましょう。税務上の書類ですから正確さが大事ですが、それだけでなく名前を間違えるのはお客様に対して大変失礼です。

    顧客の指示であっても偽りのあて名を書いてはいけません。

    あて名を「上様」と書くことについては、あて名が入っていないレシートも領収書として認められていることから問題ないという解釈もありますが、消費税法の仕入税額控除に係る帳簿の記載方法を援用して宛名がない領収書は無効であると解釈されているので、税務調査で領収書として認められない可能性があります。

    領収日付

    代金を受け取った日付を年月日で記入します。

    省略せず「令和3年」「2021年」など、年号や西暦のすべての桁まで正確に記入しましょう。

    売上代金に係る金額

    受け取った金額を正確に書きましょう。空欄で良いと言われても空欄で出してはいけません。とんでもないトラブルに巻き込まれることがあります。

    3桁ごとに桁区切りの「,」を入れます。改ざん防止のために、数字の頭には「¥」や「金」、末尾には「-」や「也」を入れましょう。

    税抜き金額と消費税額は内訳欄に記載します。

    発行元

    自店、自社の社名を記載します。住所、連絡先(電話番号)を記載します。

    社名または店名が書いてあれば代表者名は必須ではありません。

    社印が押されていなければ無効ということではありませんが一般的には社印を押します。印刷所に発注した領収書では社印をあらかじめ赤字で印刷しておくことが多いです。担当者印は押印欄があれば必ず押します。

    ただし書き

    ただし書きには、提供した商品やサービスの内容を記載します。通常は一品一品書く必要はありませんが、「飲食代として」「書籍代として」など、どのような商品やサービスを提供したのか分かるように書きます。

    「お品物代」や「お品代」ではどのような商品やサービスが提供されたのか分からないので不適切です。

    品目別の記載が必要であれば、明細が分かる書類を添付して、ただし書きには「別紙明細の通り」と記載します。

    収入印紙

    受け取ったのが売上代金の場合、金額が50,000円以上になると印紙税の課税対象となり、領収書には金額に見合った収入印紙の貼り付けが必要となります。50,000円以上100万円以下は200円などと、金額によって印紙税法に定められています。国税庁のウェブサイトに掲載されています。

    領収書の再発行

    失くしたなどの理由で再発行を求められても、支払い側に再発行の義務はありません。

    二重発行した領収書を不正使用される可能性も考えられ、実際に悪用されれば、善意で発行しても共犯とされるおそれがあります。

    よって、基本的には断れば良いのですが、顧客との関係性や要求の強さによっては、再発行に応じなければならないケースがあるかもしれません。

    どうしても再発行に応じなければならない場合には、同じ内容の領収書を発行して「再発行」と記入します。

    再発行の場合でも、金額が5万円以上だと収入印紙と割印が必要です。

    クレジットカード決済の場合

    クレジットカード決済の場合は、直接代金のやりとりが発生しません。つまり、店側は顧客から直接支払いを受けていないため、領収書を発行する義務がありません。

    クレジットカード払いのときに店からの領、顧客は同じ商品サービスの提供に対して、店とクレジットカード会社の両方に支払ったことになってしまいます。

    これも前述した再発行と同様に、どうしても領収書発行に応じなければならない場合には、「クレジットカード決済」と記載した領収書を発行しましょう。

    クレジットカード払いときに領収書を発行するときは収入印紙を貼る必要はありません。クレジットカード払いの際の領収書は、現金取引の領収書と違い、印紙税の課税対象である「金銭または有価証券の受取書」にあたらないからです。ただし、領収書中に「クレジットカードを利用した」ことを明記する必要があります。この記載がないと「金銭または有価証券の受取書」に該当し、収入印紙の貼り付けが必要となります。


    会社事務入門事務処理のいろいろと事務処理の効率化>このページ

  • 会計監査人

    会計監査人とは

    会計監査人とは、株式会社における機関のひとつです。会計監査人になることができるのは、公認会計士または監査法人(公認会計士が集まって作った法人)のみです。

    委員会設置会社と大会社(最終事業年度の貸借対照表に計上された資本金額が5億円以上か、負債総額が200億円以上の会社)では、会計監査人の設置は義務です。それ以外の株式会社では任意なので、定款に定めることによって会計監査人を設置することができます。

    会計監査人設置会社では、監査役の監査報告には監査役による会計監査の意見を直接記載せず、会計監査人による会計監査の「相当性」についての意見を記載します。つまり、会計監査の部分は会計監査人に任せ、監査役は業務監査を中心に監査を実施します。

    会計監査人就任の手続き

    会社は公認会計士や監査法人の中から、監査役または監査役会の同意を得て、株主総会の決議を経て会計監査人を設置します。員数は法定されていません。その任期は選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時まです。つまり、任期は1年単位ということになります。

    会社は、会計監査人設置会社となった旨及び変更年月日を登記する必要があります。また、会計監査人が就任した旨及び会計監査人の氏名又は名称並びに就任年月日なども登記する必要があります。

    会計監査人の報酬は監査役または監査役会の同意を必要とします。

    会計監査人の職務

    公認会計士などの職業的会計人として、独立の第三者の立場から、投資家のために、企業が作成した財務諸表等を、会計基準に従って監査し、適正に表示されていることを証明するのが会計監査人の職務です。

    会計監査人には、会計の帳簿および資料を閲覧、謄写し、または監査対象会社の取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができる権限があります。子会社に対しても同様です。

    大会社では、会計監査人は計算書類、連結計算書類の全部を受領してから4週間を経過した日等の通知期限までに特定監査役及び特定取締役に対し、会計監査報告の内容を通知しなければならないとなっています。決算の日程管理ではこの期間を特に考慮しなければなりません。

    会計監査中に、取締役の職務執行に関して不正行為または法令定款に違反する重大な事実を発見した場合には、会計監査人は監査役に報告する義務があります。

    株主総会で選任される株式会社の機関のひとつであることから、会計監査人である公認会計士や監査法人も株主代表訴訟の対象とされることがあります。

    会社事務入門株式会社の仕組み>このページ

  • 法定調書とは?法定調書の作成と提出のポイント

    法定調書とは?法定調書の作成と提出のポイント

    毎年1月に税務署に提出する給与所得の源泉徴収票等の法定調書について、税務担当が知っておくべき重要なポイントを解説します。

    提出義務と対象範囲

    法定調書とは、給与や報酬などを支払った者が、その内容を税務署に報告するために法律で定められた書類です。主なものは以下の通りです。

    • 給与所得の源泉徴収票: 従業員に支払った給与や賞与について作成します。
    • 退職所得の源泉徴収票: 退職金について作成します。
    • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書: 弁護士、税理士、作家、プロスポーツ選手など特定の個人事業主やフリーランスに支払った報酬について作成します。
    • 不動産の使用料等の支払調書: 不動産の賃料や権利金などを支払った場合に作成します。

    すべての支払いについて提出が必要なわけではなく、金額基準が定められています。例えば、給与所得の源泉徴収票では、年末調整を行った従業員のうち、給与の支払金額が500万円を超える人などが提出対象となります。役員や年末調整を行わない人など、対象範囲は細かく定められているため、国税庁の手引きで確認が必要です。

    提出期限と提出先

    法定調書とそれをまとめた法定調書合計表は、原則として支払いが確定した年の翌年1月31日までに、給与の支払者の所在地を所轄する税務署に提出します。この提出は企業の義務であり、怠った場合は罰則の対象となる可能性があります。

    電子申告の義務化

    法定調書の提出枚数が一定数以上の場合、e-Tax(国税電子申告・納税システム)または光ディスク等による電子申告が義務付けられています。

    • 令和3年1月1日以降の提出分: 法定調書の種類ごとに、前々年に提出すべきであった枚数が100枚以上の場合、電子申告が義務化されています。
    • 令和9年1月1日以降の提出分: 上記の基準が30枚以上に引き下げられる予定です。

    この義務化の対象となる場合、書面での提出は原則として認められません。提出義務化の基準枚数は今後も変更される可能性があるため、常に最新の情報を確認することが重要です。早めに電子申告の準備を進めておくことをお勧めします。


    会社事務入門経理課はどんな仕事をしているの?わかりやすく解説!>このページ