カテゴリー: 労働時間

  • サービス残業について

    サービス残業は労働基準法違反

    労働基準監督署の調査で多く指摘され是正を求められる事項の一つが、働いたのに労働時間にカウントされない、いわゆるサービス残業の問題です。

    サービス残業は賃金不払いという労働基準法違反です。

    労働時間について理解する

    まずは、法定労働時間、法定休日を理解しましょう。
    法定労働時間 →法定休日

    使用者が働時間と認識していない時間でも労働時間とされる時間があります。
    労働時間に含まれる時間と含まれない時間

    始業時間や終業時間は就業規則に定めているだけでは足りません。実際に働いた時間を把握しなければなりません。
    労働時間の把握方法

    サービス残業の解消

    変形労働時間制や裁量労働制を採用すると、トータルとしての労働時間を増やさずに時間外賃金の支払いを減らすことができます。法律に定めがある時間管理法ですから、是非、活用するべきです。

    そして、ダラダラと時間を過ごして本来は不要であった時間外労働が発生しないように、効率の良い職場作りを通して総労働時間の圧縮を図るべきです。そのうえで、支払うべきものは支払わなければなりません。

    経営者が自覚しなければならないのは、募集の際に示した始業時間と終業時間は労働条件の重要な要素だということです。給与は、その時間を働く対価として設定されています。

    労働契約の内容として約束した始業時間と終業時間を軽視し、タダで労働時間を延長しろというのは無茶な話しです。所定時間以上働かせた場合は追加の賃金を払うというのは当然のことです。請求されないことに甘えて未払いを続けていると、後日、多額の未払い賃金を請求されるリスクが高まります。

    サービス残業の解消は、賞与の支払や昇給の実施より優先課題です。サービス残業問題を解消しないで賞与を支払うなどは、本末転倒です。賞与や昇給は法律上は求められていませんが、時間外労働割増賃金の支払は労働基準法に定められた義務だからです。

    法律通りに残業手当を払えば会社がつぶれるという経営者もいますが、一度、本当につぶれるかどうか試算してはどうでしょう。実際は払えるという試算がでたらすっきりと払うべきです。


    会社事務入門労働時間の適正な管理三六協定と割増賃金、正しく説明できますか?>このページ

  • 勤務間インターバル

    勤務間インターバルとは

    勤務間インターバルとは、労働者が一つの勤務を終えてから次の勤務が始まるまでの時間のことです。

    勤務間インターバルが足りなければ、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保できません。

    EUの勤務間インターバル規制では「24時間につき、最低でも連続した11時間の休息時間」と示しています。

    わが国においてすでに導入している企業の例でも、勤務間インターバルが11時間の例がみられます。

    睡眠時間8時間に通勤時間、食事や風呂などを考慮すると、11時間が軸になると考えられます。

    仮に、8時から17時までが通常勤務の会社で11時間のインターバルを実施すると、夜の10時まで残業した場合は、11時間の間をあけるために、8時ではなく9時以降に出社しなければなりません。

    法制化

    労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の2条1項の規定により、勤務間インターバルを設定する努力義務が事業主に課せらることになりました。

    第2条1項
    事業主は、その雇用する労働者の労働時間等の設定の改善を図るため、業務の繁閑に応じた労働者の始業及び終業の時刻の設定、健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。

    「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」の部分です。

    政府は2025年までに、導入する企業の割合を15%以上にすることを目標に掲げています。

    就業規則例

    この制度を導入するのであれば就業規則の改正が必要です。厚生労働省のホームページに就業規則の規定例が出ています。

    (勤務間インターバル)
    第◯条 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、◯時間の継続した休息時間を与える。

    このままでも良いのですが、法律上は努力規定なので、上記の「◯時間の継続した休息時間を与える」を「◯時間の継続した休息時間を与えるよう努力する」としても問題ないでしょう。また、同じく努力規定であるので、「いかなる場合も」と規定するまでもないと思われます。

    次いで、この例の第2項で、継続した休息時間が与えられなかった場合にどうするかを規定しています。

    例1
    一つは、勤務間インターバルを守って勤務できなかった時間を労働時間に参入して賃金を払う定め方です。

    2  前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。

    労働時間とみなされた時間は当然有給になります。前日の残業代に加えて一定の金銭補償をするということになります。企業に金銭負担をさせることで残業抑制効果をねらっているのかもしれません。

    例2
    勤務間インターバルを確保するために遅く出勤しても良いという定め方です。

    2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、翌日の始業時間は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる。

    この場合、遅く出勤した日は終業時間もその分繰り下がるのか、終業時間を同じにして所定労働時間勤務したとみなすのか明確に規定した方がよいでしょう。この日に遅刻控除がなくて定時退勤できるのであれば、実質は例1と同じ扱いになります。

    例2
    厚生労働省が示した規定例には例外も示されています。

    ただし、災害その他避けることができない場合は、その限りではない。

    例外も規定するべきですが、この規定例では「その限りでない」ケースは非常に限定的だと思われます。


    会社事務入門労働時間の適正な管理>このページ

  • 監視または断続的労働とはどういうものか?

    労働基準法の規定

    労働基準法は、監視または断続的労働に従事する者で労働基準監督署長の許可を受けた者については、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用しない旨定めています。

    労働基準法第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
    一 (略)
    二 (略)
    三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

    宿日直も断続的労働の一つです。ただし、宿日直はここで説明する「監視断続的労働」とは異なる所があるので次の記事を参照してください。

    関連記事:宿直日直の制度を導入する場合の注意点

    労働基準監督署長の許可が必要

    所轄労働基準監督署長に「監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可」を申請し、許可を受けることにより、労働基準法の労働時間、休憩、休日について適用除外になります。

    監視・断続労働であれば1日8時間という法定労働時間のしばりはありませんが、適用する労働者についての所定労働時間を定める必要があります。その場合、約束していた時間を超えて勤務させた場合は超過時間分の追加賃金(割増しする義務はありません)を払う必要があります。その超過した時間帯が深夜にかかるときは深夜割増が必要です。

    「監視・断続的労働に従事する者に対する適用除外許可申請」の様式は厚生労働省ホームページの「主要様式ダウンロードコーナー」のページに掲載されています。

    具体的な例

    監視・断続的労働とは、通常の労働と比べて労働密度が希薄で、身体の疲労や精神の緊張も少ないとみなされる勤務のことです。

    この除外規定は、すごくヒマな仕事が想定されています。この規定を拡大解釈して、それなりに大変な仕事に適用すると問題になります。

    監視労働の具体例と非該当となる状態

    監視労働は、一定の部署で監視を主たる業務とし、身体的・精神的緊張が少ないと認められるものです。

    具体例

    • 守衛、門番:門や入り口で出入りを監視し、緊急時に対応する業務。
    • 宿直・日直:施設内での夜間や休日の見回り、電話応対など。
    • 住み込みのマンション・アパート管理人:日常の清掃や管理業務はあっても、大部分は待機時間である場合。

    該当しなくなる状態

    以下のような状況では、監視労働には該当しません。

    • 精神的緊張が高い業務:交通整理、駐車場の車両誘導、高価な物品を扱う場所の監視など、常に集中力を要する業務。
    • 危険または有害な場所での業務:危険物などを扱う場所での監視。
    • 通常の業務との混在:監視業務の合間に、頻繁に他の労働(例:清掃、事務作業)を行う場合。

    関連記事:夜間の守衛を採用する際の注意事項

    断続的労働の具体例と非該当となる状態

    断続的労働は、実作業が間欠的で、手待ち時間(待機時間)が実作業時間を上回るような業務です。

    具体例

    • 役員専属運転手:送迎業務がない待機時間が長い場合。
    • 寄宿舎の賄い人:食事の準備・片付けの時間が限られており、その間の待機時間が長い場合。
    • 設備等の修繕係:平常時は業務がほとんどなく、緊急の事故発生に備えて待機している場合。

    該当しなくなる状態

    以下のような状況では、断続的労働には該当しません。

    • 実作業時間が手待ち時間を上回る場合:常に清掃や管理作業を行っており、待機時間がほとんどない場合。
    • 実労働時間の合計が8時間を超える場合:たとえ実作業が断続的であっても、労働時間全体が長い場合は該当しません。
    • 人為的に断続的な労働形態を採用している場合:工場労働のように継続的な作業を、意図的に休憩時間を挟んで断続的にしているようなケース。

    会社事務入門労働時間の適正な管理>このページ

  • 労働時間の適正な把握について

    労働時間の状況の把握

    長時間労働者に対する面接指導を実施する前提として、管理監督者を含むすべての労働者を対象として。労働時間の状況の把握をしなければなりません。

    安全衛生法第66条の8の3 事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

    面接指導を実施するため

    労働時間の把握は、長時間労働者に対する面接指導を実施するために行うものです。

    厚生労働省令で定める方法

    これは、労働安全衛生規則第五十二条の七の三に、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。と定められています。 具体的な点は後述します。

    次条第一項に規定する者を除く

    これは、高度プロフェッショナル制度対象者のことです。高度プロフェッショナル制度対象者は、別な方法により管理することになります。管理監督者や裁量労働制の適用者は除かれません。

    労働時間の把握方法

    労働時間の状況は次の方法によって把握する必要があります。

    ア タイムカードによる記録

    イ パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法

    ロ その他の適切な方法

    タイムカードによる記録

    多く採用されている方法は、タイムカードの打刻時刻を始業及び終業の時刻として記録する方法です。

    これらの方法は、必ずしも労働時間と一致していないという難点があります。

    朝、タイムカードを打刻してもすぐに仕事を始めるとは限りません。帰りのときも、仕事が終わってすぐにタイムカードを打刻しているとは限りません。

    なお、タイムカードを労働基準法に定めがある「出勤簿」としている事業場もありますが、タイムカードは出勤簿の代わりにはなりません。

    関連記事:出勤簿の記載事項と管理上の注意点

    パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法

    業務用パソコンへのログイン、ログアウトにより就労時間を把握する方法です。

    ICタイムカードを使って就労時間を把握する方法もあります。ICタイムカードを利用した場合は、勤怠管理システムと連動させることで、出社・退社時間をPC操作履歴や入退室時間と照らし合わせた確認作業ができるため、労働時間の把握や管理がしやすくなります。

    この方法による場合は、パソコンやスマホで有給休暇、時間外労働の申請・承認もできるため、管理上の利点も増します。

    パソコン等の記録で勤怠を管理するときは、社内のパソコンでデータ管理するよりも、クラウド型勤怠管理システムが有効です。初期費用も抑えられます。

    その他の適切な方法

    具体例として、通達では「事業者の現認」を挙げられています。

    「現認」とは、従業員が出社した時間と退社した時間とを、上司などが実際にその目で見て確認した時間を記録することです。

    しかし、上司が部下の行動をすべて把握することは現実には困難なことから、この方法によるには相当無理があるでしょう。

    自己申告制については、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合には可能とされています。

    ただし、現実的には、客観的な方法を利用できないケースは考え難いでしょう。通達でも、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは、認められない」としています。

    みなし算定

    「みなし」というのは実際にかかった時間にかかわらず、そうなのではないかと仮定して労働時間を決めることです。労働時間のみなし算定は厳密には問題がないとは言えませんが、例えば制服への着替え時間について、実際にそれぞれ要した時間ではなく一律で着替え時間は何分とするという方法が実際に行われています。例としては1回3分または5分があります。一日の労働時間に自動的に6分または10分を加算するわけです。この時間は、かかっている時間の平均ではなく、実際にこのくらいあればよいだろうという納得感のある時間を設定しなければなりません。

    着替え時間にみなし時間を設定することがあるのは、何分かけて着替えするかは人によって異なるし、意図的に時間をかけることも可能だからです。そうした現実を無視してそれぞれの実際に要した時間を労働時間として加算すれば不公平感が生じることもあるからです。

    記録の保管義務

    把握した労働時間の状況は、その記録を5年間保存しなければなりません。


    会社事務入門労働時間の適正な管理>このページ

  • 事業場外労働のみなし労働時間制

    事業場外労働のみなし労働時間制とは

    事業場の外に出て働いているときに、実際の労働時間を計算せず、その仕事をするのに通常必要とする時間を働いたとみなす制度が「事業場外みなし労働時間制」です。

    一日の大半を社外で過ごす営業担当者などのように、実際の労働時間を会社が正確に把握することが困難な職種への適用が想定されています。

    労働基準法第38条の2 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。

    実際の労働時間を把握できないときは、所定労働時間労働したとみなすという規定です。

    「みなす」というのは、そのような事実があったものとして扱うということです。

    たとえば、所定労働時間が8時間の場合に、ある日実際には4時間しか働いていなかったとしても、8時間働いたことにするということです。

    ただし書きの部分は、たとえば、所定労働時間が8時間であるとしても、通常、その8時間では足りず、10時間は必要な業務であれば、10時間労働したものとみなすという規定です。

    この場合だと、法定労働時間を超える2時間についての割増賃金を払わなければなりません。

    就業規則

    事業場外みなし労働時間制を行う場合は、就業規則に記載する必要があります。また、労働条件通知書や雇用契約書に明記しなければなりません。

    労使協定

    ② 前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。

    通常の業務に必要とする時間については、労使協定で定めるという規定です。

    ③ 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

    その労使協定を労働基準監督署に届け出る必要があります。

    「事業場外労働に関する協定届」の様式は厚生労働省ホームページの「主要様式ダウンロードコーナー」のページに掲載されています。

    なお、みなし労働時間が法定労働時間内であれば労使協定は必要ありません。就業規則の定めは必要です。

    この制度が適用されたときの労働時間

    所定労働時間をみなし労働時間とした場合は、実際の労働時間が所定労働時間より少ない場合でも、所定労働時間労働したとみなします。

    ただし、事業場外から会社に戻ってからの業務が定時を過ぎて続けば、残業として扱わなければなりません。

    例えば、営業担当者が夕方6時に会社に戻ってきて、9時に退社したときは、6時〜9時の3時間は時間外労働にしなければなりません。4時に戻ってきて、9時に退社したときは、終業時間(たとえば5時)から9時までの4時間が残業時間となります。

    この制度を適用できる場合

    みなし労働時間制の適用基準は2つあります。

    1つは、事業場外で業務が行われることです。

    労働の一部が事業場外で行われて、残りの一部の事務処理などが事業場内で行われる場合は、事業場外の労働の部分についてのみが「みなし労働時間」となります。

    2つめの条件は、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定し難い場合に適用できるとされていることです。

    通達(昭和63.1.1基発1号)
    事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務であること、したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合にあっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。
    ①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の適正な管理をする者がいる場合
    ②事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合

    この通達によれば、

    携帯電話等で随時使用者の指示を受けながら労働する場合や、訪問先と帰社時刻、当日の具体的業務の指示を受けている場合などは、この見なし労働時間制は適用できないとされています。

    つまり、スマホ等でいつでも連絡がとれるようになった今では、スマホ等の所持が認められない現場や圏外にあるような現場でない限り、事業場外みなし労働時間制の適用は難しいと言われています。

    ただし、テレワークについては、通常はインターネットを通じて業務内容を把握でき、一定の指揮監督をすることができることから、事業場外みなし労働時間制の適用は難しいと言われてきましたが、コロナ禍を機に「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」が発出され、これまでの解釈が若干緩和されたと考えられています。

    関連記事:テレワークにおける労務管理


    会社事務入門労働時間の適正な管理いろいろな労働時間制>このページ

  • 割増賃金に代えて有休を選択する代替休暇制度

    代替休暇制度とは

    代替休暇制度とは、割増賃金のうち、時間外労働が60時間を超えた分の割増賃金を「お金」ではなく「休み」として与えることができる制度です。

    「60時間を超えた分」と書きましたが、正確には「60時間を超えた部分の割増賃金のうちの、割増率25%を超えた分」を休暇でとることができる制度です。

    1ヶ月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は50%以上となっています。

    そこで、割増賃金のうち25%分は賃金で支給し、残りの25%分について、賃金か休暇を選ぶことができるようにしたのです。どちらにするかは、本人の意向が優先です。

    労働者の休息の機会を確保する観点から、まとまった単位である1日、半日、1日または半日のいずれかによって与えることとされています。

    代替休暇は、時間外労働が60時間を超えた月の末日から2ヶ月の間に与えなければなりません。

    関連記事:代替休暇|就業規則

    具体的な時間計算

    代替休暇の時間数を算定します。代替休暇の時間数を求めるには換算率が必要です。

    1か月の法定時間外労働時間数-60時間)×換算率=代替休暇の時間数

    換算率は次の式により求めます。

    「代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率

    代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率」

    計算例

    法定外時間労働100時間とします。

    代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増率は1.5
    代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率は1.25です。

    (100時間-60時間)×換算率(1.5−1.25)=10

    10時間が代替休暇の時間数です。

    代替休暇を与えることができる期間

    労使協定

    代替休暇制度を導入するには過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶ必要があります。

    労使協定で定める事項は以下の事項です。

    ①代替休暇の時間数の具体的な算定方法

    ②代替休暇の単位(1日、半日、1日または半日)

    ③代替休暇を与えることができる期間(法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内)

    ④代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

    この労使協定は、代替休暇の制度を設けることを可能にするものであって、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけるものではありません。制度があったうえで、代替休暇を取得するか否か、いつ取得するかは個々の労働者がその都度自由に決めることができます。

    関連記事:代替休暇に関する労使協定のサンプル


    会社事務入門労働時間の適正な管理三六協定と割増賃金、正しく説明できますか?>このページ