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退職の事務

従業員が退職するときの手続き

Last Updated on 2023年11月19日 by

退職手続き

従業員から退職の意思表示があったとは、原則としてただちに退職の手続きを行う必要があります。

退職手手続きが滞ったり、不備があったりすると従業員の退職後の生活に支障がでる可能性もあるため、迅速に正確に手続きを進めましょう。

主な項目は次のとおりです。

□ 退職届の受理
□ 社会保険の手続き
□ 雇用保険の手続き
□ 所得税と住民税の手続き
□ 貸与物や健康保険証を回収
□ 離職票・源泉徴収票などを交付

退職届の受理

口頭での申し出も有効ですが、退職の意志を確認するため、およびその後の手続きの都合上、書面による退職届の提出を求めます。

民法に定められた退職予定日の14日より前、もしくは会社の就業規則に定められた期日までに退職の意思を表明した場合は、会社の事情にかかわらず、退職を認めて手続きを開始しなければなりません。

従業員の意思表示が民法が定める期日より後になった場合は不受理とすることができますが、それは従業員が求める期日での退職ができないというだけで、退職そのものは認めて手続きを開始しなければなりません。

退職手続きのための自己申告書

退職願に記載されていない事項、退職者の希望などを、退職願提出後に文書で申告してもらうと円滑な手続きに役立ちます。

書式:退職手続きのための自己申告書

社会保険の手続き

健康保険と介護保険、厚生年金保険を社会保険といいます。退職から5日以内(土日祝日の場合は翌日)に管轄する年金事務所へ「健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届」と「本人および扶養親族分の健康保険証」を提出します。

健康保険証は退職日までに必ず返却してもらいましょう。

退職後の公的医療保険について説明しましょう。国民健康保険へ加入するか、健康保険を「任意継続」するか選ぶことができます。

関連記事:健康保険の任意継続被保険者

傷病手当金、出産手当金などの健康保険からの給付は退職後も継続して受給できる場合があります。

関連記事:健康保険の資格喪失後の給付

雇用保険の手続き

退職から10日以内に事業所を管轄するハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。また、離職票が必要な場合は、雇用保険被保険者離職証明書を提出します。

所得税と住民税の手続き

所得税の手続き

源泉徴収を交付します。源泉徴収票には退職時に所得税額、1月1日から退職日までに支払った給与や賞与額、控除した社会保険料などが記載されています。

所得税法は、退職後1か月以内に源泉徴収票を交付する義務を定めています。

住民税の手続き

給与から住民税を天引きする特別徴収を行っている場合、「給与支払報告に係る給与所得異動届書」を従業員が居住する市町村に退職日の翌月10日までに提出します。

貸与物や健康保険証を回収

退職する従業員への貸与物などは、退職日あるいは最終出勤日までに回収します。

回収漏れがあると後々のトラブルにつながります。有給消化などで早くに出勤しなくなる従業員について注意が必要です。

□ 貸与品
□ 資料やデータ

貸与品

社員証・制服・会社貸与の携帯やPCなど、会社からの貸与品はすべて回収します。貸与品の一覧を示すなどして回収漏れがないようにしましょう。

従業員の名刺や業務上で得た顧客や取引先からの名刺も、機密情報漏洩や個人情報流失を防ぐため回収の対象にするのが一般的です。

資料やデータ

業務のために従業員が作成した資料や、顧客データなども回収の対象です。会社の機密情報でもあるので、必ず回収し流失漏れを防止します。

離職票・源泉徴収票などを交付

退職する従業員に交付する書類は特に迅速に処理しましょう。基本的には、退職後に発行されるので郵送するのが一般的です。

退職後の住所を確認しておきましょう。

□ 源泉徴収票
□ 雇用保険被保険者証
□ 退職証明書
□ 離職票
□ 健康保険資格喪失証明書

源泉徴収票

源泉徴収票は、本人が所得税の確定申告もしくは年末調整を受けるために必要な書類です。

雇用保険被保険者証

雇用保険被保険者証を会社が保管していた場合は従業員に返却します。

退職証明書

退職証明書は、従業員が退職証明書を希望した場合は発行する義務があります。就業期間・業務内容・その事業における地位・賃金又は退職の事由(解雇の場合にはその理由)など、本人の希望に応じて記載します。希望しない事項を書いてはいけません。

関連記事:退職証明書のサンプル

離職票

離職票は、雇用保険の失業給付などを受けるために必要な書類です。退職後すぐに再就職先が決まっている場合などは必要ないので退職前に確認してください。

従業員が離職票を希望したときは、ハローワークに「雇用保険被保険者離職証明書」を提出します。

その際、賃金台帳・労働者名簿・出勤簿など、離職日以前の賃金支払い状況と離職理由が確認できる資料を持参して確認を受けます。

雇用保険被保険者離職証明書は、従業員本人が離職理由の内容を確認し、自署する必要があります。従業員の自署が得られない場合は、その理由を記載して事業主の氏名を記入します。

ハローワークで手続き後「離職票−1」「離職票−2」の2枚を従業員へ送付します。

健康保険資格喪失証明書

健康保険資格喪失証明書は従業員が退職後、国民健康保険に加入する際に市区町村に提出する書類です。

年金機構のホームページから「健康保険・厚生年金保険 資格取得・資格喪失等確認請求書(通知書)をダウンロードし年金事務所(郵送の場合は事務センター)に提出します。

会社が発行する証明書等で受け付けてもらえる市町村もあるので、市区町村のホームページで確認して、入手しやすい書類を選択しましょう。

書式:健康保険資格喪失を証明する退職証明書のサンプル

説明事項

社会保険料の説明

社会保険料は退職日の翌日が資格喪失日となり、前月分までの保険料が差し引かれます。つまり、退職日が月の末日かそれ以外の日かによって社会保険料が違ってきます。

たとえば、9月20日までに退職した場合は、9月21日が資格喪失日になるので前月分の8月までの社会保険料を差し引きます。9月30日に退職した場合は10月1日が資格喪失日となるので、9月分まで保険料が発生します。

社会保険料は、基本的に翌月の給与から差し引かれます。退職する場合は退職月の最後の給与から2か月分を差し引くので、従業員に説明が必要です。

住民税の説明

住民税は前年の所得で税額が決定し、その年の6月から翌年5月まで給料から天引きで徴収されます。退職日によって取り扱いが異なります。

1月1日~4月30日までの退職であれば、退職金や最後に支払った給与から一括で徴収します。

5月1日〜5月31日までの退職であれば、最後の給与から1か月分を徴収します。

6月1日~12月31日までの退職であれば、自分で納付する普通徴収へ切り替えるか退職金や最後の給与から一括で徴収するかを従業員に決めてもらいます。

すぐに再就職し、特別徴収を継続する場合 は「給与支払報告に係る給与所得異動届書」を再就職先へ送付して、再就職先で手続きしてもらいます。

その他

雇用保険の保険料は、退職月の総賃金額に保険料率を掛けて徴収するので退職日による違いはありません。

所得税も特に変わりません。退職日までの給与から社会保険料を差し引き、扶養人数を考慮した源泉徴収税額表から税額を決定します。

退職金の支給がある場合は退職金の源泉徴収も行います。従業員から「退職所得の受給に関する申告書」が提出されていれば、従業員は確定申告が不要になります。

説明文書

退職予定者に手続きを説明するときに、口頭だけの説明は頭に入りにくいものです。要点を記載した文書を示して説明しましょう。

書式:退職者に渡す説明文書のサンプル

大量離職の場合

30人以上の離職者が出るときは、ハローワークに再就職援助計画策定届出か大量離職届を提出しなければなりません。

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