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採用の事務

従業員を採用するときの手続き

Last Updated on 2023年11月12日 by

採用手続き

従業員を採用したときは多くの書類のやり取りや、行政庁等への提出が必要です。期限が決まっているものもあるので、迅速な処理が必要です。

採用確認の書類

採用することを決定したら以下の書類を送付して入社の意志を確認します。

□ 採用通知書(内定通知書)
□ 入社誓約書

採用通知書

採用通知書は採用選考の合格者に対して採用を通知する書類です。法律上、採用通知書の交付義務はありませんが、多くの会社で交付しています。

入社誓約書

入社誓約書は採用通知に応えて入社を約束する書類です。返送の期日を明記しましょう。

書式:入社誓約書のサンプル

雇用手続きの書類

出社日が近づいたら雇用手続きのための書類を送付します。会社によっては採用手続きのための出社を求めることもあります。

□ 労働条件通知書・雇用契約書
□ 辞令交付
□ 身元保証書
□ 安全運転誓約書
□ 個人情報誓約書
□ 扶養控除等申告書
□ 健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届

返送が遅くなればその分手続きがずれ込むので、提出期限を明記して送付しましょう。

書式:新入社員に送付する入社手続き説明文書のサンプル

雇用契約書・労働条件通知書

労働条件通知書は、労働基準法で交付が義務づけられている書類です。従業員の押印は要りません。

雇用契約書は、雇用主と従業員間の労働条件の取り決めをまとめたものです。双方の署名、または記名押印が必要です。労働条件通知書とほぼ同内容になりますが、労働条件通知書とは別に必要です。

書式:雇用契約書のサンプル

労働条件通知書に従業員の押印欄を加えて、労働条件通知書兼雇用契約書として発行することがあります。

これらの書類は返信用封筒を添えて郵送し、署名・捺印をして返送してもらうのが一般的です。

辞令交付

多くの会社では辞令を交付します。

書式:辞令のサンプル

身元保証書

一般的には身元保証書の提出を求めます。

書式:身元保証書のサンプル

安全運転誓約書

自動車の運転を伴う業務につかせる可能性があれば安全運転誓約書を求めることがあります。

書式:安全運転誓約書のサンプル

扶養控除等申告書

扶養控除等申告書は、所得税の源泉徴収に必要な書類で、扶養者の有無にかかわらず提出が必要です。

なお、扶養控除申告書を提出できるのは主たる給与を支払う事業所のみなので、かけ持ちで働いている人にについてはどこが主たる勤務先か確認が必要です。

健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届

健康保険被扶養者異動届と国民年金第3号被保険者届は、社会保険加入手続きの際に必要な書類で、扶養者がいる場合のみ提出が必要です。

従業員から提出してもらう書類

採用予定の者が入社日前に用意しなけれならない書類等を連絡します。

□ 雇用保険被保険者証番号
□ 基礎年金番号
□ 給与振込先口座届
□ 源泉徴収票
□ マイナンバー

雇用保険被保険者証番号

雇用保険被保険者証番号は、「4桁ー6桁ー1桁」の11桁の番号です。新卒採用者は普通持っていませんが、中途採用者の場合で雇用保険加入履歴がある者には提出を求めましょう。

雇用保険被保険者証は会社が保管し、従業員が退職する際に返却することが多いと思われます。写しをとって返却する会社もあります。

基礎年金番号

基礎年金番号は、「4桁ー6桁」の10桁の番号です。年金手帳や基礎年金番号通知書で確認します。2022年4月から年金手帳の交付が廃止され、それ以降は基礎年金番号通知書が発行されています。

年金手帳は会社が保管している場合もありますが、原則として本人が保管するべきものです。

給与振込先口座届

従業員の給与の振込先を提出してもらいます。会社の書式に銀行名や口座番号を記入してもらうのが一般的ですが、通帳の口座番号が載っているページのコピーでもよいでしょう。本人の口座であることを確認します。振込手数料の関係などで特定の銀行を指定することもありますが、本人の承諾が必要です。

源泉徴収票

年度内に違う会社で働いていた人に提出してもらいます。前の会社を退職する際に従業員へ交付されています。年末調整のときに必要な書類ですが入社時に提出してもらうのが一般的です。

マイナンバー

内定者の社会保険や労働保険などの各種保険や税金の手続きを行うために、マイナンバーを提供してもらう必要があります。

扶養家族がいる内定者の場合は、本人以外に扶養家族のマイナンバーも必要です。

マイナンバーは特定個人情報にあたるため、提供してもらう方法や管理取り扱いには注意が必要です。

関連記事:従業員マイナンバーの取得管理について

社会保険の手続き

健康保険と厚生年金、介護保険をあわせて社会保険といいます。

社会保険加入基準

従業員の社会保険加入基準は、一般労働者と短時間労働者の2つ基準があります。

一般労働者の場合は、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上、かつ、契約期間が2か月以上の人が加入対象です。

短時間労働者の場合は下記要件をすべてを満たす人が加入対象です。
□ 週の所定労働時間が20時間以上
□ 賃金が月額8万8千円以上
□ 学生以外(定時制や夜学等を除く)
□ 2か月以上継続して雇用が見込まれる
□ 従業員が101人以上の事業所

2024年10月には「従業員が51人以上の事業所」に適用範囲が拡大されます。

社会保険の加入手続き

社会保険の加入手続きは、雇用してから5日以内に健康保険・厚生年金被保険者資格取得届を、事務センターまたは年金事務所へ提出します。

全国健康保険協会(協会けんぽ)以外の場合は別途、各健康保険組合でも手続きが必要です。

雇用保険の手続き

雇用保険は主に退職後に失業給付を支給するための保険です。

雇用保険は複数の事業所で加入することはできないため、複数の会社で働いている場合は主たる会社で加入します。

雇用保険の加入基準

週の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上継続して雇用される見込みがある人が加入対象です。

雇用保険の加入手続き

従業員を雇用した月の翌月10日までに雇用保険被保険者資格取得届をハローワークへ提出します。

税金の手続き

所得税・住民税などの税金についての手続きも必要です。

所得税に関する手続き

所得税は入社時に従業員から提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をもとに源泉徴収の処理をします。

住民税に関する手続き

住民税は前年の所得に対して課税されます。手続きは普通徴収か特別徴収です。

普通徴収

普通徴収とは、従業員が個人で支払い手続きを行い納税する方法です。

採用された人が普通徴収になっていて、入社時に特別徴収に切り替える場合は、雇用主が未使用の住民税の納付書もしくは納付済みの領収書と「特別徴収への切替申請書」を居住地の各市区町村へ提出します。

普通徴収の納付期限が過ぎているなどで、年度内は切り替えできないことがあります。

特別徴収

特別徴収とは雇用主が従業員の代わりに、毎月の給与から住民税を天引きし、納税する方法です。

内定者が前職で特別徴収になっていて、入社後も継続して特別徴収とする場合は、特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を使用者が居住地の各市区町村へ提出します。こちらも年度内は切り替えできないことがあります。

1月1日以降に入社した従業員の場合、前年分の給与支払報告書は前の勤務先から市区町村に提出されていて、新しい特別徴収決定通知書も前の会社に送付されていることがあります。手間がかかりますが、特別徴収は事業主の義務なので対応しなければなりません。

法定帳簿

関連記事:労働者名簿の記載事項と管理上の注意点

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健康診断と安全教育

入社後すぐに雇入れ時健康診断と安全教育を実施しなければなりません。

関連記事:雇入時健康診断について

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