Last Updated on 2021年9月5日 by 勝
打切補償とは
仕事を原因として負傷し、又は疾病にかかった従業員に対しては、労働基準法第75条の定めにより、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければなりません。
この規定により、長期にわたって負担をしなければならないことがありますが、この補償義務を一定の期間後に一定の支払をすることで免除するのが「打切補償」です。
労働基準法第81条
第75条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。
平均賃金の1200日分
平均賃金は、その従業員が休業を開始する直前の賃金締切日からさかのぼって3ヶ月間に支払われた給与の総額(賞与などを含まない額)をその3ヶ月間の総日数で割って1200をかけた金額になります。
→平均賃金
実際に平均賃金の1200日分を計算すると、仮に月給40万円の従業員であれば約1600万円になります。当該労働者が労災保険から傷病補償年金の支払いを受けている場合は、この1200日分を実際に支払う必要はありません。
解雇制限との関係
業務上負傷し又は疾病にかかつた労働者が休業している期間とその後30日間は、解雇できないという労働基準法の定めがあります。
使用者が打切補償を支払った場合は、上記制限期間に該当しても解雇制限が除外されます。
打切補償を支払って解雇する場合でも、30日前の解雇予告か解雇予告手当は、打切補償とは別に支払う必要があります。
労災保険給付との関係
使用者が費用負担せず、労災保険が適用されて労災保険から治療費が出ている場合も打ち切り補償をすることができます。
労災保険から傷病補償年金が支給されている場合は打切補償が支払われたものと同視されます。
ただし、傷病補償年金が支給されるのは労災保険に定める3級以上というかなり重い障害の場合のみです。
障害の程度が軽微な場合は、傷病補償年金ではなく、障害補償年金や障害補償一時金の対象になりこの給付は打切補償とは同視されません。解雇するには1200日分の打切補償の支払が必要です。
ただし、障害補償年金や障害補償一時金は病気やけがの治療が一通り終わった後に支払われるものなので、通常、休業期間は終わっています。
打切補償と退職金
退職金は、在職中の賃金の後払いの性格があり、また、在職中の功労に報いるための賃金なので、打切補償と別に考えなければなりません。
退職金制度を設けている会社では打切補償を支払うことによって従業員を解雇する場合、退職金と打切補償はそれぞれ支払う必要があります。