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就業規則

従業員が10人になったら就業規則を作らなければならない

Last Updated on 2024年10月17日 by

10人以上で届け出義務がある

労働基準法第89条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(以下略)

この条文について解説します。

常時10人とは

労働基準法には「常時十人以上」と書いてあります。

使用する従業員数は、いろいろな事情で変動することがあります。

例えば、雇用しているのは10人だが、1人休暇をとっている場合はどうでしょうか。この場合は、常時10人以上に該当します。

例えば、通常は9人でやっているが、たまたま臨時的な業務のために短期のアルバイト雇ったという場合はどうでしょうか。この場合は、ほとんどの場合に10人未満でやっているのであれば就業規則の作成義務はない、とする解釈が一般的です。ただし、アルバイト期間によっては作成義務が生じることもあるので作成したほうが無難です。

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労働者

労働基準法には、常時十人以上の「労働者」と書いてあります。

つまり、労働者の数を数えるのであって労働者でない人を含めてはいけません。

パート、アルバイト、契約社員などは雇用形態が異なるだけで労働者に変わりありません。1人分でカウントします。勤務時間が少ない者も1人です。

事業主、取締役、監査役は、経営者は含まれませんが、使用人兼務役員や幹部社員は労働者としてカウントします。

派遣労働者は労働者ですが就業規則の義務についてはカウントしません。派遣労働者は派遣元の労働者としてカウントされるからです。

事業場単位でカウント

労働基準法第89条の十に「当該事業場」と書いてあります。

十前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

つまり、就業規則は、会社全体はなく「事業場」単位で作って届け出します。

事業場単位ですから、同じ会社であっても、本社、支店、工場の、10人以上になった事業場から届け出義務が発生します。

ただし、出張所等で、規模が著しく小さい事業場は、届け出することによって、直近上位の事業場と一括して一つの事業場としてとして取り扱うことができます。

常時10人の事業場が1つもない場合は、全体として10人になっていたとしても、法律上は就業規則の作成義務がありません。

関連記事:事業場とは

届け出する

労働基準法に「行政官庁に届け出なければならない」と書いてあります。行政官庁というのはこの場合は労働基準監督署です。

なお、従業員代表の意見書を添付しなければなりません。

関連記事:従業員代表の意見を聴く

届出の様式は厚生労働省ホームページに掲載されています。

複数の事業場がある会社等で、複数の事業場において同一の内容の就業規則を適用する場合は、本社において一括して届出をすることができます。

10人未満でも作成してよい

始業時間や終業時間等の労働時間に関する定めはや、賃金の締切日や支払い日等に関する定めなど、会社のルールは必要です。

そうしたルールのうち重要なものは労働条件通知書や雇用契約書に記載しているはずで、軽微なものは掲示や口頭で伝えていると思います。少人数のときはそれでなんとかやっていけると思います。

しかし、人数が増えてくれば、あいまいなやり方では問題が発生する危険が高まります。労働条件についてはきちんと就業規則を示したほうがきちんとした管理ができるようになります。

また、従業員に対して懲戒処分をするには、就業規則がないと難しくなります。例えば、使用者が労働者を懲戒解雇するには、就業規則等に記載された懲戒解雇事由に該当する必要がありますが、これについては、就業規則の作成義務がない事業場も同様であるという判例があります。

したがって、10人未満で作成義務がない場合でも、就業規則を作成することをお勧めします。この場合、労働基準監督署への届け出義務はありませんが、効力を持たせるために社内への周知はきちんと行いましょう。

関連記事:周知について

労働基準法は1人でも使用していれば適用されるので、例えば1か月単位の変形労働時間制を採用する場合は従業員が10人未満でも就業規則が必要です。ただし、従業員数が10人以上になるまでは、就業規則を労働基準監督署に届け出る必要はありません。


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