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従業員を採用するときは労働条件通知書を交付しなければなりません

Last Updated on 2024年11月11日 by

労働条件の明示義務

従業員を採用するときは、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければならないことが労働基準法に定められています。

労働基準法第15条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働条件通知書の交付で明示する

労働基準法施行規則第5条4 法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。

労働条件通知書を書面で交付するのが原則ですが、労働者の希望があれば、ファクシミリと電子メールを使うこともできます。

関連記事:労働条件の明示は電子メール等でもよい

書式

厚労省ホームページに「労働条件通知書」のモデルが掲載されています。

労働条件通知書に全ての労働条件を記載するのでなく、就業規則等を交付することで明示を簡略にすることもできます。その場合は労働条件通知書に、就業規則等を別途交付した旨の記載が必要です。

交付手続き

交付の手続きをきちんとやらないと、後日、受け取っていないと主張されることもあります。

そのようなトラブルを避けるために、労働条件の通知をした証拠を残すようにしましょう。

労働条件通知書の書式を作るときに、文書の末尾に「この労働条件通知書を受領しました。令和〇年〇月〇日氏名〇〇〇〇印」という欄を作って、日付を入れて署名してもらいましょう。

この場合、労働条件通知書は正本と控えの二部作成して、正本は従業員に保管してもらい、日付と署名をもらった控えを会社が保管しましょう。就業規則などを交付したときは、交付文書一覧を同様に作成して日付署名をもらった会社控えを保管しましょう。

交付時期

交付するのは内定時か入社日か、どちらがよいか迷うことがあるかもしれません。

結論から言うと、どちらでも法的に問題はありません。しかし、次の点を考慮して。適切なタイミングを選んでください。どちらを選ぶかは、会社の規模、採用人数、労働条件の内容など、様々な要因によって異なります。

内定時に交付する場合

内定時に交付すると、入社前に労働条件について十分に理解してもらうことができます。特に、新卒採用の場合は、入社前の不安を軽減させるために内定時に交付することが一般的です。

入社時に交付する場合

入社日、すなわち最初の出勤日に交付することも広く行われています。ただし、入社日は雇用期間の第一日目としてすでに雇用されている状態にあります。この段階で労働条件について認識の相違が見つかるとトラブルに発展する可能性があります。

明示すべき事項

労働基準法には、「賃金、労働時間その他の労働条件」と書いてあります。「その他」を含めた全体は、労働基準法施行規則第5条第1項に列記されています。

一 労働契約の期間に関する事項
一の二 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)
一の三 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
二 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
三 賃金(退職手当及び第五号に規定する賃金を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
四の二 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
五 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び第八条各号に掲げる賃金並びに最低賃金額に関する事項

六 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
七 安全及び衛生に関する事項
八 職業訓練に関する事項
九 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
十 表彰及び制裁に関する事項
十一 休職に関する事項

このうち、第四号の二から第十一号までに掲げる事項は、定めがある場合に明示しなければならない事項です。

明示すべき事項の補足

通算契約期間または更新回数の上限の有無と内容

有期労働契約の締結時と更新時に適用されます。この項目は労働基準法施行規則第5条に追加されます。

有期労働契約の締結と契約更新のタイミングごとに、更新上限(有期労働契約2の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示が必要になります。

通算契約期間や更新回数に上限を設けない場合には、その旨の明示が必要になります。

なお、この点については、告示(有期契約労働者の雇止めや契約期間について定めた厚生労働大臣告示(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準))も改正されて、契約更新などで労働者側に不利な変更を伴う場合には、予めその理由を労働者に説明することが必要になります。

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就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲

採用直後の配置場所等だけでなく、変更の範囲を記載しなければなりません。「変更の範囲」とは、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲を指します。(令和6年4月1日改正施行)

変更の範囲を具体的に示すことが求められるのですが、総合職など、異動や転勤を伴い、就業の場所および業務に変更を限定しない従業員を採用することがあります。この場合は、「会社の定める事業所への異動(転居を伴う配置転換を含む)を命じることがある。」「適性に応じて、会社の指示する業務への異動を命じることがある。」のような表記も許されると解されています。(参考:厚生労働省「多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書」令和4年3月30日)

臨時に支払われる賃金

関連記事:臨時の賃金、臨時に支払われる賃金とは

無期転換

無期転換申込機会の明示

有期契約労働者に対して、無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、「無期転換への申し込みが可能であること」を明示しなければなりません。

無期転換後の労働条件の明示

有期雇用労働者に対して、無期転換申込権が発生する更新のタイミングごとに、「無期転換後の労働条件」を明示しなければなりません。

また、無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって、他の通常の労働者とのバランスを考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するように努めなければなりません。

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雇用契約書との関係

労働条件通知書はあくまでも使用者が労働者に労働条件を示したものであって、厳密に言えば、労働条件通知書へのサインは書類を受け取った事実を証明するものでしかなく、雇用されることについて合意したことを示すものではありません。

雇用契約は法律上は口頭によっても成立するので、必ずしも書面が必要なわけではありませんが、口頭約束は証拠が残らないので、書面による雇用契約書を取り交わしましょう。

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パートタイム・有期雇用労働者に対する明示

パート従業員や有期雇用従業員には、上記に加えて、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、相談窓口についても文書を交付して明示しなければなりません。(パート有期雇用労働法第6条)

関連記事:パート・有期雇用労働者雇用の注意点

求人段階での労働条件明示

このページで説明した労働条件の明示は、採用時に行うもので、労働基準法に定められたものです。求人段階での労働条件の明示については職業安定法に定められています。

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