カテゴリー: 賃金

  • 主な賃金制度の解説

    主な賃金制度の解説

    賃金制度

    賃金制度とは、従業員に支払われる給与をどのように決定し、管理するかを定めた社内のルールや仕組み全体のことです。会社の経営方針や事業目標に合わせて、従業員の働きや能力を公正に評価し、適切な報酬を支払うための土台となります。

    賃金制度を構成する要素

    賃金制度は、主に以下の3つの要素で構成されます。

    賃金の決定方法(どのような基準で賃金を計算するか)

    • 年功給: 年齢や勤続年数に応じて賃金が上がっていく制度です。
    • 職能給: 個人の能力やスキルが向上するにつれて賃金が上がる制度です。
    • 職務給: 担当する仕事の内容や責任の重さで賃金を決定する制度です。
    • 役割給: 組織内での役割の重要性や貢献度で賃金を決定する制度です。
    • 成果給: 個人の業績や成果に応じて賃金を決定する制度です。

    賃金の構成(どのような項目で給与が構成されるか)

    • 基本給: 賃金の中心となる部分です。
    • 手当: 役職手当、住宅手当、通勤手当、家族手当など、基本給に加算されるものです。
    • 賞与・一時金: 夏や冬に支給される、業績や個人の評価に応じた報酬です。

    賃金の支払い方法(いつ、どのように支払うか)

    • 月給、週給、日給、時給など、支払いの期間を定めます。
    • 年俸制のように、1年間の総額を決めておき、それを月々分割して支払う方法もあります。

    賃金制度の役割と重要性

    賃金制度は、単に給与を支払うだけでなく、企業と従業員双方にとって重要な役割を果たします。

    企業にとって:

    • 優秀な人材を惹きつけ、定着させるための採用競争力を高めます。
    • 従業員のモチベーションを維持し、生産性や業績を向上させます。
    • 賃金の決定基準を明確にすることで、不公平感をなくし、労使間の信頼関係を築きます。

    従業員にとって:

    • 自分の働きや成果がどのように評価され、給与に反映されるかを理解できます。
    • 将来のキャリアプランや生活設計を立てる上での安心材料となります。

    このように、賃金制度は企業の成長と従業員の働きがいを両立させるための、非常に重要な経営ツールといえます。

    職能給

    職能給は、現在多くの会社で用いられている賃金制度です。

    社員をレベルをいくつかの等級に位置付けし、その等級に応じた賃金を支給し、成果・能力等が向上することで位置づけを上昇させていく賃金制度です。

    2000年代以降、成果主義や職務給(ジョブ型)を導入する企業が増えていますが、完全に職能給をやめた企業は少数です。多くの企業は「職能給+成果給」「職能給+役割給」といったハイブリッド型に移行しています。

    関連記事:職能給とはどういうものか?分かりやすく解説します

    年功序列賃金

    年功序列賃金制度は、勤続年数と年齢 を主な評価基準とし、それに応じて給与が自動的に上昇していく仕組みです。終身雇用制度とともに、戦後の日本経済の高度成長期を支えてきた日本の伝統的な人事制度の一つです。

    本来の年功序列賃金制度は、「全く評価をしない」わけではありません。 勤続年数や年齢を主な評価軸としながらも、それに加えて個人の能力や貢献度も加味していました。しかし、現代の成果主義と比べると、個人の業績や成果が賃金に与える影響は限定的でした。

    関連記事:年功序列賃金制度とは?年功序列は復活するか?

    その他の賃金制度

    成果主義賃金制度

    成果主義賃金制度とは、仕事の成果に応じて賃金やボーナスに差をつける賃金制度です。

    関連記事:成果主義賃金制度とは?メリット・デメリット、向いていない職場、向いていない企業は?

    職務給

    職務給は、その職務そのものの価値に基づいて支払う賃金制度です。原則として、同じ職務を担当する限り、誰がやっても給与額は同じです。

    職務給においては、業務内容が変わらない限り昇給しないのが原則です。異動により業務内容を変えると賃金が下がる場合があるので、異動させにくくなります。業務範囲が明確なので、従業員は範囲を超える仕事をしなくなります。

    関連記事:職務給をわかりやすく解説!海外で主流なのは本当?

    役割給

    役割給は、従業員が担当する「役割」の重要性や難易度、貢献度に応じて賃金を決定する制度です。職務給が「仕事内容そのもの」に焦点を当てるのに対し、役割給は「その仕事に期待される責任や成果」に重きを置く点が特徴です。

    関連記事:役割給とは?どんな賃金制度と組み合わせて運用されるか?

    年俸制

    年俸制とは、従業員の給料を1年単位で決める制度です。

    関連記事:年俸制の正しい理解と運用のポイント

    ジョブ型雇用

    関連記事:ジョブ型雇用とは?従来の雇用との違いやメリット・デメリットを解説


    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識>このページ

  • 臨時の賃金、臨時に支払われる賃金とは

    臨時の賃金とは

    「臨時の賃金」という用語は、労働基準法第89条に出てきます。

    労働基準法89条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。(中略)
    四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項

    労働基準法第24条②にも「臨時の賃金」がでてきます。

    第24条②は賃金の毎月1回以上支払いの原則を定める規定ですが、「ただし」として次のようにあります。

    ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

    ここでは、第89条の「臨時の賃金等」が、

    臨時に支払われる賃金

    賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金

    であることを示しています。

    次に「賞与その他これに準ずるもの」と「臨時に支払われる賃金」を解説します。

    賞与その他これに準ずるものとは

    社会保険における賞与の定義は次のようになっています。

    賞与とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。

    所得税法では次のようになっています。

    賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいう。

    定期の給与と別に支払われるものであれば、どのような名称を用いていても賞与と捉えられるということです。また、精勤手当、能率手当などのように一見定期の給与に含まれるようものでも、1ヶ月を超える期間の成績等によって支給されるものは賞与とされます。

    臨時に支払われる賃金とは

    少し古いものですが、次の通達があります。

    臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が未確定でありかつ非常に稀に発生するものをいうこと。名称の如何にかかわらず、右に該当しないものは臨時に支払われた賃金とはみなさないこと。(S22.9.13基発第17号)。

    臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたものとは傷病見舞金等を意味します。

    結婚手当等については、支給条件が事前に決まっていれば、臨時的、突発的ではないのですが、支給事由の発生が不確定であり、且つ非常に稀に発生する(多くは1回)ので臨時に支払われる賃金に含まれるという意味です。


    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識>このページ

  • 仕事ができないことを理由に給与を下げれるか

    原則としてできない

    仕事ができないからといって一方的に給与を下げることはできません

    労働者を採用する際に、雇用契約が締結されています。雇用契約書という文書がなくても、雇用の際に示した内容が雇用契約です。

    雇用契約では、賃金や労働時間などの雇用条件を定めています。

    雇用条件を勝手に変更することはできません。賃金は雇用契約の最重要部分なのでいろいろ理由があってもなかなか難しいのです。

    給与を下げる理由が「仕事ができない」「間違えてばかりいる」「仕事の覚えが悪い」などの理由であれば、出るところに出て争いになればほぼ経営者が負けます。

    ただし、減給してもよい場合もあります。

    適正な懲戒処分によって減給する場合、本人との合意による場合、就業規則に定められた手順にしたがって減給する場合などです。

    以下で説明します。

    懲戒処分による減給

    懲戒事由に該当するような事情があって、処分相当であると認められる場合には、大きく減給することはできませんが、懲戒処分としての減給が認められる可能性があります。次の記事に書いておきました。

    関連記事:減給処分をするときの注意点

    本人との合意による減給

    雇用契約は当然のことですが契約の一つです。契約なので双方が合意すれば変更できます。

    労働契約法第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

    同第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

    ただし、ここでいう同意は、労働者の本心からの同意でなければなりません。雇用している強い立場を利用して押し付ければ、合意書にハンコがあっても無効になります。

    自分の給料が減ることを本心から同意する人はほとんどいないでしょう。説得が難しいし、納得したとしても、後で、あのときは無理強いされたと言われれば、さかのぼって無効になる可能性があります。

    合意を得て減給する場合はそうしたリスクがあることに留意してください。

    就業規則に定められた手順による減給

    職務内容や職位の変更による減給

    運転職として勤務していた人にドライバー手当を出している場合に、運転職から内勤職に移動になればドライバー手当が無くなって問題ありません。

    営業所長として勤務していた人が他の事業所に転勤した結果、営業所長でなくなった場合も所長手当が無くなっても問題ありません。

    課長であった人が正当な理由があって降格された場合に、課長手当が無くなっても問題ありません。

    いずれも、就業規則等に、職務等と手当の関連が明記されていることが前提です。

    また、正当な理由もなく異動させたり降格させたりすれば、人事権の濫用として無効になる可能性があります。

    給与制度の適用による減給

    就業規則などで定めている給与制度の運用の結果として減給になるのは問題ありません。

    例えば、給与の中に売上に連動した歩合給が含まれていて、本人がその制度が適用されることを承知の上で仕事をしている場合には、本人の営業成績が振るわずに歩合の部分が減少しても問題ありません。

    ただし、生活に大きく差し支えるような制度になっていれば、その制度の内容によっては問題になる可能性があります。

    評価制度の運用結果による減給

    評価制度において、一定の基準の評価に満たない場合に下位の等級に落とすことが定められていて、評価制度の適正な運用の結果降級に該当して、結果的に減給になる場合も問題ありません。

    ただし、評価制度が公平に運用されていることはもちろん、評価の結果が低いことについて、具体的にどの点が不足しているのか本人にできるだけ指摘し、改善方法を含めた指導を適切に行っていることが前提になります。

    つまり、会社が手をつくしても、どうしても改善が認められず一定の基準に満たない場合に、人事評価規定に基づいた下位の等級への変更が認められ、結果的に減給することが認められるということであって、制度に書いてあればできるというほどの簡単なことではありません。

    就業規則を変更して減給する場合

    これまでの就業規則に賃金を下げる根拠が見当たらないので、そうした条文を追加して対応しようとすることがあります。

    改定前にさかのぼって適用することはできませんが、所定の手続きを経た就業規則改訂を行えば、改定後に適用することができます。

    賃金を下げる目的で就業規則を改訂する場合は「不利益変更」という問題点に注意してください。労働者が損になるような変更は原則としてできません。

    労働契約法第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

    労働契約法9条に「ただし」とあるように、第10条の条件を満たせば変更することができるので、不利益変更が全部だめというわけではありませんが、いろいろと制約があります。

    関連記事:就業規則改定による不利益変更

    結論的に言えば、賃金を下げたいと思ったときは、本人と率直に話し合い、事情を説明して、無理強いせずに納得してもらうのが一番です。「就業規則第何条によって」などと真正面から攻めても、反発されて争いになれば、一般的には会社が不利だというのが実情です。労働関係法は労働者有利に作られており、行政もその立場で判断することが多いからです。個々の労働者の賃金を引き下げたいという事情が発生したときは、それに伴うリスクを検討した上で慎重に対応しましょう。


    会社事務入門懲戒処分をするときの注意点減給処分をするときの注意点>このページ

  • 従業員の給料を払えない時はどうするか

    支払いの遅れは法律違反

    従業員の給与は、約束通りの金額を約束の期日(給料日)に支払わなければなりません。賃金支払いの遅延や一部不払いは、労働契約の不履行として支払うべき給料の全額に加えて損害遅延金の請求を受けることになります。また、労働基準法に定められた賃金の全額払い、一定期日払いに反することになるので、労働基準法違反で刑事罰の対象になることもあります。

    労働基準法の定め
    労働基準法第24条(抜粋) 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

    民法の定め
    民法415条(抜粋) 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

    関連記事:賃金の全額払いの原則

    関連記事:一定期日払の原則

    払わなかった金額が少ないとか、遅延した日数が少ないなどの理由で許されることではありません。また、賃金遅延の原因が天災地変にあったとしても遅延してはならないとされています。

    東日本大震災のときの厚生労働省Q&Aより
    【Q5-1】 今回の地震で、1.事業場の倒壊、2.資金繰りの悪化、3.金融機関の機能停止等が生じた場合、労働基準法第24条の賃金の支払義務が減免されることはあるでしょうか。
    【A5-1】御質問については、労働基準法には、天災事変などの理由による賃金支払義務の減免に関する規定はありません。

    支払い遅延の手続き

    従業員の生活に大きな影響を与えるため、できるだけ早く従業員に説明しなければなりません。

    その際、遅延賃金の内訳を文書で示し、いつになれば支払うことができるかの見通し、できれば期日を明確に伝えなければなりません。なお、遅延した給与を支払う際は年利6%の遅延損害金を加算して支払わなければなりません。

    事業が倒産状態にあるときは国の未払賃金立替払制度を利用することができます。

    関連記事:未払賃金立替払制度

    賃金を放棄してもらえるか

    賃金を支払えば会社が倒産してしまうなどの理由で、労働者の方から自発的に賃金の全部または一部の放棄が提案されることがあるかもしれません。

    他者を害しないかぎり自分の権利を放棄することは原則として自由だとされています。したがって、自分が受け取るべき賃金を放棄することも自由であるはずです。

    しかし、賃金は労働者の生活の糧であるため、実際問題として、労働者が自由意思で賃金債権を放棄するということは考えにくいことなので、たとえ文書による合意をとったとしても、後日、債権放棄を促す有形無形の圧力があったと見做されればそのような合意は簡単に無効になると考えられています。つまり、本当に自由な意思による提案であるかが決定的に大事なのです。当然ながら、使用者側からの放棄の働きかけは慎まなければなりません。


    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識>このページ

  • 男女同一賃金の原則について

    労働基準法の定め

    女性だから、という理由で男性社員より低い給与にするのは違法です。

    (男女同一賃金の原則)
    労働基準法第四条 使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

    このように、明確に差別を禁止しています。違反すると労働基準法第119条により「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処」される可能性があります。

    女性であることを理由に

    労働基準法4条には「女性であることを理由として」とあります。

    つまり「女性は一般的または平均的に能力が低いので異なる賃金体系にしている」「女性は一般的または平均的に早く辞めるので異なる賃金体系にしている」「女性は一般的または平均的に家庭において主たる稼ぎ手ではないので異なる賃金体系にしている」などの運用は明らかに法律違反です。

    これに対して、それぞれの職務内容、職務遂行能力、年齢、勤続年数等の合理的な基準によって賃金を決定し、その結果、たまたま男女差が生じたとしても、女性であることを理由とする差別に当たらないので法律違反にはなりません。

    男女雇用機会均等法の定め

    男女雇用機会均等法は、女性が社会で働くうえで不当な扱いを受けないために定められた法律です。

    男女雇用機会均等法には、性別を理由にした差別の禁止(第5条、第6条、第7条)と婚姻・妊娠・出産などを理由にした不利益取扱いの禁止(第9条)の規定があります。

    労働基準法第4条とあわせて注意が必要です。

    裁判例

    男性と女性に別々の賃金表を適用し、その結果正当な理由なく女性の賃金が少なくなっていたというケースは労働基準法第4条違反とされました。正当な理由がなければ賃金に関する規定を男女別に定めることはできません。

    男性行員には妻に収入があっても家族手当を支給していたものの、女性行員には夫に収入があった場合は家族手当を支給していないというケースには労働基準法第4条に違反するという判決があります。手当や賞与、退職金等も賃金の一部なので、女性であるという理由で支払わない、または減額することはできません。

    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識>このページ

  • 労使協定で賃金から控除するときの注意点

    全額払いの原則

    労働基準法に次のような定めがあります。

    労働基準法第24条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

    つまり、原則として賃金を支給するときは、何であっても差し引いて支給してはいけない、というのが原則です。これを賃金の「全額払いの原則」といいます。

    全額払いの例外

    賃金の全額払いには例外があります。先ほどの労働基準法24条には次のような定めもあります。

    労働基準法第24条 (続き)法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

    つまり、原則として差し引いて支給してはいけないとしつつ、法律にもとづく場合と労使協定にもとづく場合は例外的に控除してもよいと定めています。

    法律にもとづく場合

    所得税・地方住民税の源泉徴収や健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの社会保険料が該当します。

    労使協定にもとづく場合

    労使協定とは、労働者の過半数で組織する労働組合との書面による協定です。労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者と協定します。

    関連記事:労使協定とはなにか

    労使協定で控除できる項目

    労使協定による控除は、従業員が負担することが明らかなもので、給与から控除することが従業員にとって便利なものが認められています。

    具体的には、物品等の購買代金、社宅・寮その他福利厚生施設の費用、財形貯蓄金、労働組合費、貸付金の返済等があります。

    給料の振込手数料は労使協定をしても控除することができません。

    協定書の例

    協定書サンプル:賃金控除に関する労使協定のサンプル

    その他の注意点

    労使協定書の扱い

    賃金控除の労使協定は、労働基準監督署への届出は不要です。すぐに取り出せる場所に保管しておきましょう。

    労使協定の内容は従業員へ周知しなければなりません。協定締結後に入社した従業員に対しては協定内容を入社説明事項に加えるなどして周知を忘れないようにしましょう。

    この労使協定を自動更新にしていると、労使協定の内容と実際に控除している項目が異なってきても気が付かないことがあります。時々チェックしましょう。

    就業規則の変更

    労使協定を結んだ場合でも、就業規則や給与規程にその旨を規定する必要があります。

    労使協定の効力は、労働基準法第24条1項の賃金全額払い原則違反を免れさせるものにすぎないので、労働契約上適法に控除するためには、別途労働協約または就業規則に根拠規定を設けなければならないという判例があるからです。

    したがって、賃金控除の労使協定は届け出は不要でも就業規則の変更を労働基準監督署に届け出する必要があります。

    個別同意書

    就業規則等への規定がなければ、労使協定があっても労働者の個別の同意が必要になります。

    ただし、労働者との個別の同意については注意が必要です。使用者と労働者の力関係からして、後日争いになったときは、控除の同意が従業員の完全に自由な意思に基づくとはいえないと判断される可能性が大きいからです。

    また、同意によって控除している場合は、自由意思での同意ですから、途中で合意を撤回されるとその後は控除できなくなります。

    控除の限度額

    民法及び民事執行法の規定により、賃金の4分の3(その額が33万円を超える場合は33万円)に相当する部分については、使用者側からは控除することはできません。つまり、控除額の上限は4分の1までです。貸付金の返済控除などについて注意が必要です。


    会社事務入門賃金制度賃金はどう決まる?― 労働法で定められている「賃金のルール」総まとめ全額払いの原則>このページ