カテゴリー: 育児介護

  • 会社が設置しなければならない「相談窓口」を一つにまとめればどうなの?

    会社が設置しなければならない相談窓口の種類

    法律で設置が義務付けられている「相談窓口」には次のようなものがあります。

    ・ハラスメント(セクハラ・パワハラ・マタハラ)に関する相談窓口

    ・育児・介護休業等に関する相談窓口

    ・ストレスチェック後の相談窓口(努力義務を含む)

    ・障がい者からの合理的配慮に関する相談窓口

    ・公益通報に関する相談窓口

    それぞれ役割や守備範囲が異なるため、原則として、それぞれの法令に基づいて個別に設置しなければなりませんが、窓口の一本化や担当者の兼務が禁止されているわけではありません。

    相談窓口を一つにまとめればどうなの?

    これらの「窓口」を個々に設置するのではなく、「総合窓口」のように1か所にまとめることは、以下のメリットとデメリットを考慮し、適切に運用されれば有効な手段となります。

    メリット

    どこに相談すればよいか迷うことなく、1か所にアクセスすれば良いので、従業員にとって相談のハードルが下がります。

    情報の一元管理: 各種相談内容を一元的に管理することで、企業全体のハラスメントや働き方に関する課題を総合的に把握しやすくなります。

    各種問題が複雑に絡み合う場合(例:ハラスメントとメンタルヘルス問題など)でも、担当者間の連携がスムーズに行われ、より包括的な解決に繋がりやすくなります。

    窓口の設置や運営に関わるリソース(人員、設備など)を効率的に配分できます。

    デメリット・注意点

    育児・介護、ハラスメント、メンタルヘルス、障害者対応など、それぞれ専門的な知識や対応が求められます。総合窓口の担当者は、幅広い知識を持ち、必要に応じて専門部署や外部機関と連携できる体制が必要です。

    相談内容によっては非常にデリケートな情報が含まれるため、相談者のプライバシー保護や秘密保持が徹底される体制を確立することが不可欠です。相談窓口をまとめた場合、1か所で複数の事案を扱うため、情報管理には特に注意が必要です。

    ハラスメントなど、時には会社にとって不都合な情報も寄せられる可能性があります。総合窓口が中立的な立場で対応できる体制を構築することが重要です。外部の専門家(弁護士、社会保険労務士など)との連携も有効です。

    総合窓口として機能させる場合でも、それぞれの義務付けられた相談内容について、どこに、どのように相談できるのかを従業員に明確に周知する必要があります。

    結論として

    「総合窓口」として一元化することは、従業員の利便性向上や情報の一元管理といった点で有効な手段ですが、各相談内容に対する専門性と適切な対応を担保するための体制(担当者の専門知識、研修、外部連携、プライバシー保護の徹底など)をしっかりと構築することが重要です。形式的な設置に留まらず、実質的に機能する窓口として運用されることが、企業にとっての法的リスク低減と健全な職場環境の維持に繋がります。


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  • 「柔軟な働き方を実現するための措置」を選択した場合の注意点

    3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者に関する柔軟な働き方を実現するための措置を実施しなければなりません。(2025年10月改正施行)事業主が、「柔軟な働き方を実現するための措置」を選択・導入する際に注意すべき点は多岐にわたります。主な注意点を以下に整理します。

    措置の選択と導入に関する注意点

    意見聴取の義務

    事業主は、柔軟な働き方を実現するための措置を講じる義務が令和7年10月1日から生じます。

    施行日までに、職場のニーズを適切に把握するため、過半数労働組合等から意見を聴取する機会を設ける必要があります。

    育児当事者からの意見聴取や労働者へのアンケート調査も並行して行うことが望ましいとされています。

    意見聴取の結果、労働組合の意見に沿えない場合でも、丁寧にコミュニケーションを取り、判断に至った事情を説明することが重要です。

    複数措置の義務付けと選択肢

    事業主は、「始業時間等の変更」、「テレワーク等」、「保育施設の設置運営等」、「養育両立支援休暇の付与」、「短時間勤務制度」の5つの選択肢の中から2つ以上の制度を講じる義務があります。

    労働者は、事業主が講じた制度の中から1つ選択して利用することができます。

    既に社内で導入している制度(例: 始業時刻等の変更と短時間勤務制度)がある場合、それが新たな措置義務を履行したとみなされることがあります。

    ただし、「始業時刻等の変更」にはフレックスタイム制と時差出勤が含まれますが、これら2つを導入しても1つの措置とみなされ、2つの措置を講じたことにはなりません。

    多様な働き方への対応

    措置は企業単位だけでなく、事業所単位、事業所内のライン単位、職種ごとに組み合わせを変えて講じても差し支えありません。職場の実情を適切に反映させることが望ましいです。

    労働者の職種や配置等から利用できないことがあらかじめ想定される措置を講じても、措置義務を果たしたことにはなりません。

    シフト制を含む交替制勤務を行う労働者も措置の対象です。テレワーク等が困難な業務の場合は、それ以外の選択肢から2つ以上を措置する必要があります。

    正規・非正規雇用労働者間の措置

    正規・非正規雇用労働者間で異なる措置を選択することは可能ですが、パートタイム・有期雇用労働法に基づき、不合理な待遇差とならないよう配慮が必要です。

    職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情を考慮し、待遇の性質と目的に照らして適切であると認められるようにする必要があります。

    差異の理由を労働者に対して合理的に説明できなければなりません。

    短時間労働者で既に1日の所定労働時間が6時間以下の場合でも、それをもって直ちに「短時間勤務制度」を措置したことにはならず、他の選択肢と合わせて2つ以上を講じる必要があります。

    各措置の詳細と運用に関する注意点

    テレワーク等

    テレワーク(在宅勤務等)の具体的な要件

    「在宅勤務等の措置」は、1日の所定労働時間を変更することなく利用できるものでなければなりません。

    利用できる日数は、1か月につき、週5日勤務の労働者については10労働日以上が求められます。週5日以外の労働者については、週の所定労働日数や平均所定労働日数に応じて日数を調整します。

    利用は、1日の所定労働時間数に満たない「時間」を単位とし、始業から連続、または終業まで連続して利用できるものとします 。

    この「10労働日以上」という日数は、措置を講じていると認められる最低限の日数であり、より高い頻度で利用できる措置とすることが望ましいとされています。

    「テレワーク等」には、情報通信技術を利用しない業務も含まれます。

    実施場所は自宅が基本ですが、事業主が認めるサテライトオフィス等も含まれます。

    利用日数は、1週間の所定労働日数が5日の労働者については1か月につき10労働日以上が基準となります。複数月で平均して10労働日以上となるような仕組みは認められません。

    テレワーク等の措置を講じる際には、夜間勤務や長時間労働により心身の不調が生じないよう、労働者の健康への配慮が望ましいとされています。面談による健康状況の把握や勤務間インターバル導入も考慮すべきです。

    養育両立支援休暇

    子の養育に資する目的であれば、利用目的は労働者に委ねられます。

    取得期間中は無給でも問題ありませんが、企業独自に有給とすることも可能です。

    1年につき10労働日以上の付与が求められます。付与単位を半年ごとや月ごとに設定し、年間で合計10労働日以上確保する仕組みは問題ありません。

    保育施設の設置運営等

    「設置運営等」にはベビーシッターサービスの手配と費用の一部負担が含まれます。費用負担の程度に基準はありません。

    「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」の割引券のみの提供では、費用負担に該当しないため、措置を講じたことにはなりません。

    福利厚生サービス会社と法人契約し、会費を支払うことでベビーシッターサービス料金の一部を負担している場合は、措置を講じたことになります。

    原則として事業所ごとに設置が必要ですが、近くの事業所の労働者が利用できる場合はその事業所についても措置を講じたとみなされます。事業所内にある必要はなく、通勤途上など合理的に利用できる範囲であれば認められます。

    申請手続き

    利用の申出期限に法の定めはありませんが、事業主は就業規則等で期限を明確にする必要があります。

    過度に煩雑な手続きや早すぎる期限の設定は、措置の利用を抑制し、法の趣旨を実質的に失わせるため、許容されません。

    申請は書面だけでなく、労働者が希望すればFAX、電子メール等(記録を出力可能なものに限る)、SNS、イントラネット経由の専用ブラウザでも可能です。

    個別の周知・意向確認に関する注意点

    対象者と時期

    子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)に実施する必要があります。

    施行日において既に子が3歳以上小学校就学前である労働者に対しては、個別の周知・意向確認は義務ではありませんが、利用意向が示された場合には対応が必要であり、個別の周知を行うことが望ましいとされています。

    将来的に措置の利用が可能になる可能性がある労働者(例:継続雇用期間が1年未満で現在は対象外だが更新により対象となる可能性のある者)についても、3歳になるまでの間に個別の周知・意向確認を実施する必要があります。

    日々雇用の労働者など、今後利用する可能性がない場合は実施不要です。

    実施方法

    面談(オンライン面談も可、ただし音声のみは不可)、書面の交付、FAXの送信(労働者が希望する場合のみ)、電子メール等の送信(労働者が希望し、記録出力が可能なものに限る)のいずれかで行う必要があります。

    対象者を一堂に集めて行うことも可能ですが、その場合でも上記の方法に従い、個別の書面交付を伴うなど、各対象者の事情を踏まえた配慮が望ましいです。労働者が意向を表明しにくい状況にならないよう配慮が必要です。

    実施者

    事業主の委任を受けて権限を行使する者であれば、人事部でなくても所属長や直属の上司が実施しても差し支えありません。

    ただし、実施者となる所属長や直属の上司に対し、制度の趣旨や適切な実施方法を十分に周知し、労働者が意向を表明しにくい状況にならないようにすることが重要です.

    記録

    面談による意向確認の記録は義務ではありませんが、記録が残らないため、必要に応じて作成することが望ましいとされています。

    不利益取扱いの禁止

    個別の周知・意向確認は、措置の利用申出が円滑に行われるようにすることが目的です。

    利用を控えさせるような抑制的な言動や、不利益をほのめかすような行為は禁止されています。過去に前例がないことを強調することも含まれます。

    ハラスメント防止と雇用管理

    ハラスメント防止

    「柔軟な働き方を実現するための措置」の申出や利用を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。

    制度の利用を阻害する言動(例:取得を諦めさせるような発言)や、人格を否定するような言動はハラスメントに該当する可能性があります。

    事業主は、ハラスメント防止のための方針を明確化し、労働者に周知・啓発し、相談体制を整備するなどの措置を講じなければなりません。

    配置転換時の配慮

    就業の場所の変更を伴う配置転換を行う場合、労働者の子の養育や家族の介護の状況に配慮が必要です. 労働者の意向を尊重し、代替手段の有無を確認することが求められます。

    以上の点を踏まえ、事業主は、労働者の仕事と育児・介護の両立を支援するため、法改正の趣旨を理解し、実情に応じた柔軟な働き方を導入・運用することが求められます。

    三歳に満たない子の場合のテレワークとの違い

    「柔軟な働き方を実現するための措置」におけるテレワークと、「三歳に満たない子」を養育する労働者に対するテレワークの扱いは、義務の内容と具体的な要件において異なる点があります。

    「三歳に満たない子」を養育する労働者の場合

    代替措置としての位置づけ

    3歳に達するまでの子を養育する労働者を対象とする短時間勤務制度は、業務の性質や実施体制により措置を講じることが困難な場合、労使協定により対象外とすることができます。

    この場合、事業主は代替措置を講じる義務があり、その代替措置の一つとしてテレワーク等(在宅勤務等)が加わりました。現行制度における他の代替措置は、フレックスタイム制、時差出勤、保育施設の設置運営等です。

    したがって、テレワークは短時間勤務制度の代替的な選択肢として提供されるものです。

    「三歳以上小学校就学前の子」を養育する労働者の場合

    義務化された5つの選択肢の一つ

    「三歳以上小学校就学前の子」を養育する労働者の場合にでてくるテレワークは、事業主が示す5つの選択肢の一つです。短時間勤務制度の代替措置ではありません。

    ご注意

    以上は主要な点について整理したものです。詳細は、「令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A」で検索して原文を参照してください。なお、2つの組み合わせとして最も多いのは、始業時刻等の変更と短時間勤務制度が最多のようです。


    関連記事:3歳以上、小学校就学前の子を養育する労働者が選択できる措置(Q&A)

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  • 育児休業等の制度を子が何歳になるまで利用できるか整理

    以下に、子の年齢別に講じられる措置について整理します。

    原則として1歳に満たない子に関する措置

    育児休業

    労働者が原則として1歳に満たない子を養育するためにする休業です。産後パパ育休(出生時育児休業)もこの育児休業に含まれます。

    日々雇用される者を除く全ての労働者が対象です。有期雇用労働者の場合、申出時点で子が1歳6か月に達する日(または2歳までの休業の場合は2歳)までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないことが必要です。

    労使協定を締結することで、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者や、週の所定労働日数が著しく少ない労働者(例として厚生労働大臣が定める2日以下の労働者)を対象外とすることができます。

    出生後8週間以内の子に関する措置

    産後パパ育休(出生時育児休業)

    子の出生後8週間以内に4週間以内の期間を定めて取得する休業です。

    産後休業をしていない労働者が対象で、主に男性が想定されます。ただし、養子縁組など法の要件を満たす場合は女性も対象となります。

    日々雇用される者は対象外です. 有期雇用労働者の場合、申出時点で子の出生日または出産予定日のいずれか遅い方から8週間経過後の翌日から6か月経過する日までに労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないことが必要です。

    休業期間中の就業は原則として行わないものですが、労使協定を締結することで、労働者の合意があれば、一定の範囲内(休業期間中の所定労働日数の半分以下、かつ、休業期間中の所定労働時間の半分以下)で就業することができます。ただし、事業主が一方的に就業を求めることや、労働者の意に反する取扱いは認められません。

    事業主は、円滑な取得を促すため、雇用環境の整備(研修の実施、相談体制の整備、取得事例の収集・提供、制度・方針の周知など)を行う義務があります。

    関連記事:出生時育児休業(産後パパ育休)制度のあらまし

    1歳から1歳6か月に達するまでの子に関する措置

    育児休業の延長

    子が1歳に達する日までに、労働者またはその配偶者が育児休業をしている場合、または保育所に入所できない、配偶者の死亡・負傷・疾病、配偶者との別居、子が2週間以上世話を必要とする状態になった、などの特別な事情がある場合に延長が可能です。

    1歳6か月から2歳に達するまでの子に関する措置

    育児休業の再延長

    子が1歳6か月に達する日までに、保育所に入所できない、配偶者の死亡・負傷・疾病、配偶者との別居、などの特別な事情がある場合に、さらに延長が可能です。

    3歳に満たない子に関する措置

    育児のための所定労働時間の短縮措置

    労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための措置として、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含む必要があります。

    育児休業をしていない労働者が対象です。1日の所定労働時間が6時間以下の労働者は除外されます。

    労使協定を締結することで、勤続1年未満の労働者、週の所定労働日数が2日以下の労働者、または業務の性質や実施体制に照らして措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者を除外することができます。

    育児休業に関する制度に準ずる措置(在宅勤務等の措置、始業時刻変更等の措置など)

    労働者の申出に基づき、就業しつつ子を養育しやすくするため、以下の措置が講じられます。

    ▪在宅勤務等の措置(テレワーク): 住居その他、労働契約等で定める場所での勤務。
    ▪始業時刻変更等の措置: フレックスタイム制や時差出勤など。
    ▪保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与。

    3歳から小学校就学の始期に達するまでの子に関する措置

    柔軟な働き方を実現するための措置

    労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするため、事業主は以下の措置のうち2つ以上を講じる義務があります。

    始業時刻変更等の措置: フレックスタイム制、時差出勤など。
    在宅勤務等の措置: テレワークなど。
    育児のための所定労働時間の短縮措置: 短時間勤務。
    育児を目的とした休暇: 子の看護等休暇、介護休暇、年次有給休暇を除く休暇(例: 配偶者出産休暇、入園式・卒園式等の行事参加も含む多目的休暇)。
    その他厚生労働省令で定める措置: 例: 保育施設の設置運営など便宜の供与。

    措置を講じようとする際には、労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴く必要があります。

    「柔軟な働き方を実現するための措置」を選択した場合の注意点

    小学校就学の始期に達するまでの子に関する措置

    所定外労働の制限(残業免除)

    労働者の請求に基づき、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはなりません。

    事業の正常な運営を妨げる場合、勤続1年未満の労働者、または合理的な理由があると認められる労働者は、労使協定により対象外とすることができます。

    時間外労働の制限

    労働者の請求に基づき、事業主は月24時間、年150時間を超えて時間外労働をさせてはなりません。

    事業の正常な運営を妨げる場合、勤続1年未満の労働者、または合理的な理由があると認められる労働者は、労使協定により対象外とすることができます。

    深夜業の制限

    労働者の請求に基づき、事業主は深夜(午後10時から午前5時まで)に労働させてはなりません。

    事業の正常な運営を妨げる場合、勤続1年未満の労働者、深夜に保育可能な同居家族がいる労働者(一部例外あり)、または合理的な理由があると認められる労働者は、労使協定により対象外とすることができます。

    小学校第3学年修了までの子に関する措置

    子の看護等休暇

    これまでの「小学校就学の始期に達するまでの子」から「小学校第三学年修了前の子」(9歳に達する日以後の最初の3月31日まで)に延長されました。

    負傷・疾病の子の世話、疾病の予防を図るために必要な世話(予防接種や健康診断など)、学校保健安全法に定める学校の休業(学級閉鎖など)またはそれに準ずる事由に伴う世話、子の教育・保育に係る行事(入園式、卒園式、入学式など)への参加のために取得できます。

    1年度において5労働日(養育する子が2人以上の場合は10労働日)を限度とします。

    1日未満の単位(時間単位)で取得することが可能です。ただし、労使協定により、業務の性質や実施体制に照らして時間単位での取得が困難と認められる業務(例:国際線客室乗務員、長時間移動を要する遠隔地業務、流れ作業や交替制勤務)に従事する労働者は除外される場合があります。

    勤続6か月未満の労働者を労使協定で除外する仕組みは廃止されました。


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  • 育児・介護休業法の全体像を解説

    育児・介護休業法は、少子高齢化が進む日本において、労働者が仕事と家庭生活を両立できるよう支援し、社会全体の活力を維持・発展させるための重要な役割を担っています。育児・介護休業法は、特に子育て期や介護期に時間的な制約を抱える労働者が安心して働き続けられるように、様々な制度を定めています。

    2025年の改正施行分も含めた、育児・介護休業法の主な概要は以下の通りです。

    法律の目的と基本的な考え方

    この法律は、少子高齢化による人口減少や地域社会の活力低下といった社会経済への深刻な影響に対応するため、「就労(仕事)」と「結婚・出産・子育て」、あるいは「就労(仕事)」と「介護」を、人々が希望に応じて両立できる社会の実現を目指しています。

    労働者が職業生活を通じて能力を十分に発揮し、充実した生活を送りながら、育児や介護の役割を円滑に果たせるようにすることで、労働者の福祉を向上させ、経済社会の発展に貢献することを目的としています。

    特に、出産・育児・介護を理由とした労働者の離職を防ぎ、男女問わず仕事と家庭を両立できる環境を整備することが重要視されています。

    法律が定める主な制度と事業主の義務

    育児・介護休業法は、労働者が育児や介護と仕事を両立できるように、以下の多様な制度を設け、事業主(会社)に義務や努力義務を課しています。

    休業・休暇制度

    育児休業

    労働者が1歳に満たない子を養育するために取得できる休業です。

    特定の事情がある場合は、子が1歳6か月、最長2歳になるまで延長が可能です。

    育児休業は原則2回まで分割して取得できるようになりました(令和4年4月1日から段階的に施行)。

    休業開始日の1か月前までに申し出るのが原則ですが、1歳以降の育児休業については2週間前までの申出も可能です。

    有期雇用労働者も、要件を満たせば育児休業の対象となります。

    関連記事:育児休業制度のあらまし

    出生時育児休業(産後パパ育休)

    子の出生後8週間以内に、最大4週間まで取得できる休業です。

    男性の育児休業取得を促進するため、従来の育児休業よりも柔軟で取得しやすい枠組みとして設けられました。

    2回まで分割して取得が可能です。

    原則として休業開始日の2週間前までに申し出ますが、労使協定を締結している場合は1か月前までとすることもできます。

    労使協定を結んでいれば、労働者が合意した範囲で休業中に就業することも可能です(就業日数等の上限があります)。

    関連記事:出生時育児休業(産後パパ育休)制度のあらまし

    介護休業

    要介護状態にある対象家族(配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫など)を介護するために取得できる休業です。

    対象家族1人につき、通算93日まで、3回まで分割して取得できます。

    休業開始日の2週間前までに申し出るのが原則です。

    この制度は、労働者が介護に専念するためというよりは、介護サービスの手配など、働きながら介護を継続できる体制を構築するための準備期間として利用することを想定しています。

    関連記事:介護休業制度のあらまし

    子の看護等休暇

    子が病気やけがをした際の看護、予防接種や健康診断の受診、または特定の行事参加のために取得できる休暇です。

    子1人につき年間5日、2人以上は10日まで取得可能で、時間単位での取得もできます。

    対象となる子の範囲が「小学校就学の始期に達するまで」から「小学校第3学年修了まで」に拡大されました。(2025年4月1日改正施行)

    取得事由に「感染症に伴う学級閉鎖等」および「入園(入学)式、卒園式への参加」が追加されます。

    日々雇用者を除き、労働者は対象となります。勤続6か月未満の労働者を労使協定で除外できる仕組みは廃止されます。

    関連記事:子の看護休暇制度のあらまし

    介護休暇

    要介護状態にある対象家族の介護や世話のために取得できる休暇です。

    対象家族1人につき年間5日、2人以上は10日まで取得可能で、時間単位での取得もできます。

    日々雇用者を除き、労働者は対象となります。勤続6か月未満の労働者を労使協定で除外できる仕組みは廃止されました。

    関連記事:介護休暇制度のあらまし

    柔軟な働き方を促進する制度

    所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度)

    3歳未満の子を養育する労働者が希望した場合に、原則として1日6時間とする所定労働時間の短縮措置を講じることが事業主に義務付けられています。

    介護においても、要介護状態にある対象家族を介護する労働者向けに、連続3年の期間内で2回まで、短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、費用助成などの措置を講じる義務があります。

    3歳未満の子を養育する労働者に関する短時間勤務制度の代替措置として、テレワーク等を追加できるようになりました。(2025年4月1日改正施行)

    所定外労働(残業)の制限

    小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者、または要介護状態にある家族を介護する労働者は、所定労働時間を超える労働を制限することができます。

    子を養育する労働者の対象範囲が「3歳未満」から「小学校就学の始期に達するまで」に拡大されました。(2025年4月1日改正施行)

    時間外労働(残業)の制限

    小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者、または要介護状態にある家族を介護する労働者は、月24時間、年150時間を超える時間外労働を制限することができます。

    深夜業の制限

    小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者、または要介護状態にある家族を介護する労働者は、午後10時から午前5時までの深夜労働を制限することができます。

    柔軟な働き方を実現するための措置

    3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者向けに、事業主は以下の5つの措置の中から2つ以上を選択して講じることが義務付けられます。(2025年10月1日改正施行)

    1.始業・終業時刻の変更(フレックスタイム制や時差出勤など)。
    2.テレワーク等(月10日以上利用可能)。
    3.保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(ベビーシッター費用助成など)。
    4.就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)(年10日以上付与)。
    5.短時間勤務制度。

    労働者は、事業主が講じたこれらの措置の中から1つを選択して利用できます。

    事業主は措置を講じる際に、労働組合などからの意見聴取の機会を設ける必要があります。

    これらの措置を講じる際には、労働者の心身の健康への配慮(テレワークでの労働時間管理など)が求められます。

    育児・介護のためのテレワーク導入の努力義務

    育児や介護を行う労働者がテレワークを選択できるよう、事業主は努力義務として措置を講じる必要があります。(2025年4月1日改正施行)

    事業主が講ずべき雇用管理上の措置

    個別周知と意向確認の義務

    労働者またはその配偶者の妊娠・出産、および子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は個別に育児休業に関する制度や、仕事と育児の両立に関する就業条件の意向(始業・終業時刻、就業場所、制度利用期間など)を確認し、その意向に配慮することが義務付けられます。(2025年10月1日改正施行(育児))

    労働者が対象家族の介護の必要性を申し出た場合、事業主は個別に介護休業や介護両立支援制度(介護休暇、所定外労働制限など)に関する情報を周知し、取得・利用の意向を確認することが義務付けられます。(2025年4月1日改正施行)

    労働者が介護に直面する前の早い段階(例えば40歳に達する年度)で、介護休業制度や介護両立支援制度等に関する情報を提供することも義務付けられます。介護保険制度についても併せて周知することが望ましいとされています。(2025年4月1日改正施行)

    これらの周知や意向確認は、労働者に制度の利用を控えさせるような形で行ってはならないとされています。

    雇用環境の整備

    育児休業、産後パパ育休、介護休業などの制度が円滑に利用されるよう、事業主は研修の実施、相談窓口の設置、取得事例の収集・提供、制度や方針の周知など、雇用環境を整備する義務があります。

    介護休業および介護両立支援制度に関する雇用環境の整備も義務化されました。(2025年4月1日改正施行)

    ハラスメント対策

    事業主は、育児休業や介護休業などの制度利用に関する言動によって、労働者の就業環境が害されることのないよう、ハラスメント防止のための必要な措置を講じなければなりません。これには、方針の明確化、相談体制の整備、迅速かつ適切な事後対応、原因の解消などが含まれます。

    育児休業等の申出や取得を理由とした解雇その他の不利益な取扱いは厳しく禁止されています。

    配置転換への配慮

    事業主は、労働者を転勤させる際、その育児や介護の状況に配慮しなければなりません。子の養育や家族の介護の状況を把握し、労働者本人の意向を尊重すること、代替手段の有無を確認することなどが含まれます。

    育児休業取得状況の公表

    常時雇用する労働者が300人を超える事業主は、男性労働者の育児休業等(出生時育児休業含む)の取得状況を年1回以上公表することが義務付けられました(改正前は1,000人超の事業主が対象でした)(2025年4月1日改正施行)。

    自社のウェブサイトや厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」など、一般の人が閲覧できる方法で公表する必要があります。

    復職後の支援

    育児休業や介護休業からの復帰後、原則として元の職場または元の職務に相当する職場に復帰させるよう配慮し、職業能力の開発・向上に関する措置を講じる努力義務があります。

    職業家庭両立推進者の選任

    事業主は、仕事と家庭の両立支援に関する業務を担当する「職業家庭両立推進者」を選任するよう努めなければなりません。
    これらの制度や事業主の義務を通じて、育児・介護休業法は、労働者が家庭の状況に左右されずに安心して働き続けられる環境を整備し、性別に関わらず仕事と家庭の両立が可能な社会の実現を促進しています。


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  • 介護休暇についての育児介護休業等規程記載例

    育児介護休業等規程記載例

    育児休業等規程のうち「介護休暇」についての記載例です。

    (介護休暇)
    第◯条 要介護状態にある家族の介護その他の世話をする従業員(日雇従業員を除く)は、就業規則第○条に規定する年次有給休暇とは別に、対象家族が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、介護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
    2 労使協定により除外された次の従業員は前項に規定する介護休暇を取得することができない。
    一 入社6か月未満の従業員
    二 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

    注意点

    関連記事:介護休暇制度


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  • 子の看護休暇等についての育児介護休業等規程記載例

    育児介護休業等規程記載例

    育児介護休業規程のうち「子の看護休暇等」についての記載例です。

    (子の看護休暇等)
    第◯条
    小学校就学の始期に達するまでの子(令和7年4月1日以降は小学校3年生修了までの子)を養育する従業員(第8項の従業員を除く)が、第2項に定める事由により請求したときは、就業規則第◯条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは4 月1日から翌年3月31日までの期間とする。

    2 当該子について看護休暇を請求できる事由は次のとおりとする。 
    ① 負傷し、又は疾病にかかった子の世話をするため
    ② 子に予防接種や健康診断を受けさせるため
    ③ 感染症に伴う学級閉鎖その他これに準じる事由に伴い子の世話をするため
    ④ 子の入園(入学)式、卒園式その他これに準じる式典に出席するため(ただし、運動会や授業参観などの日常的な学校行事への参加は該当しない。)

    3 子の看護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。

    4 取得しようとする者は、原則として、子の看護休暇申出書を事前に◯◯課に提出するものとする。やむを得ない事情があるときは事後速やかに提出しなければならない。

    5 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した額を支給する。(or 第一項に規定する看護休暇等で労務の提供がなかった時間も有給とする。)

    6 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、労務提供のなかった時間に対応する賞与は支給しない。(or 本制度の適用を受ける期間がある場合においても、賞与の計算においては通常の勤務をしているものとみなす。)

    7 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間を通常の勤務をしているものとみなす。

    8 本制度は日雇従業員には適用しない。また、労使協定がある場合は週の所定労働日数が2日以下の従業員に対して適用しない。

    注意点

    法改正により、子の看護休暇の取得事由が追加され、看護以外の事由による取得も一部認められることになりました。よって、2025年4月以降は、法律上、子の看護休暇ではなく子の看護休暇等と「等」が入ることになります。

    記載例では「小学校3年生修了前の子」としていますが、「9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子」でも構いません。

    8は1週間の所定労働日数が2日以下の者を労使協定によって除外する記載例です。入社後6か月未満の者については2025年4月以降は労使協定によっても除外できません。

    就業規則で無給と定めた場合は、勤務しなかった時間について賃金を支払わないことは差し支えありませんが、勤務しなかった時間数を超えて賃金を減額することはできません。

    看護休暇を有給と定めることもできます。

    子の看護休暇を取得したことを理由として賞与、昇給等で不利益な算定を行うことは禁止されています。

    関連記事:子の看護休暇制度のあらまし


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