Last Updated on 2023年11月1日 by 勝
雇用契約の注意点
パートタイム労働者とは
パートタイム労働者(短時間労働者)は、パートタイム労働法で「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義されています。
したがって、「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまる労働者であれば、パートタイム労働法の対象になる「パートタイム労働者」です。
ここでいう「通常の労働者」とは、「平成19年10月1日パートタイム労働法施行通達」によると・当該業務に従事する者の中にいわゆる正規型の労働者がいる場合は、当該正規型の労働者となっています。通常はいわゆる「正社員」のことです。
労働基準法や労働契約法、労働安全衛生法、労災保険法などは全てのパートタイム労働者に適用されます。育児介護休業法などの法律も原則として適用されますが、適用条件について注意が必要です。
有期労働契約とは
1か月とか、1年のように、期間を定めて雇用することを有期労働契約といいます。
労働基準法や労働契約法、労働安全衛生法、労災保険法などは全てのパートタイム労働者に適用されます。育児介護休業法などの法律も原則として適用されますが、適用条件について注意が必要です。
なお、有期雇用労働者であるためには、雇用期間について労働者と合意していなければなりません。書面による労働条件通知や雇用契約書で雇用期間を定めていなければ、有期雇用労働者ではなく雇用期間の定めのない労働者という扱いになります。
労働条件の明示
労働者を採用したときは、労働基準法第15条、同法施行規則第5条第1項により「労働条件の明示」をしなければなりません。
関連記事:従業員を採用するときに労働条件を明示しなければなりません
労働契約が有期雇用であるときは、「労働契約の期間に関する事項」と「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」が重要です。
期間に関する事項
契約期間では、定めがあるかないか、ある場合はその期間を記載します。有期雇用契約は定めがある契約なので、契約期間の定め:あり(〇年〇月〇日 ~ 〇年〇月〇日)と記載します。
期間の定めのある労働契約を結ぶときは、労働者が不当に長期間にわたる契約により拘束されることを防止しようという趣旨で、その期間は3年以内にしなければなりません。ただし、いくつかの例外があります。高度の専門的人材は最大5年の労働契約を結ぶことができます。
関連記事:5年の労働契約を結べる場合
労働契約法では、有期雇用の契約期間の上限を定めていますが、短い期間の契約を反復更新しないようにする配慮も求めています。
更新する場合の基準に関する事項
有期契約を結ぶ際には、期間が満了したとき契約を更新するかしないかの「更新の有無」と「更新の基準」を明示しなければなりません。
期間限定で、延長することがあり得ないのであれば「契約更新の可能性なし」と明示します。
契約期間を延長する可能性がある場合には「契約更新の可能性あり」と明示したうえで、契約を更新する場合またはしない場合の判断基準を明示しなければなりません。
厚生労働省は、明示すべき「判断の基準」の具体的な内容として、次の例を示しています。
□ 契約期間満了時の業務量により判断する
□ 労働者の勤務成績、態度により判断する
□ 労働者の能力により判断する
□ 会社の経営状況により判断する
□ 従事している業務の進捗状況により判断する
パート・有期雇用に求められる明示事項
さらに、採用した労働者がパート従業員や有期雇用従業員であるときは、パート有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の規定により、速やかに、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」、「相談窓口」について文書の交付などにより明示しなければなりません。
期間中の解約
有期雇用契約の途中解約には制限があります。期間を定めた場合は、その期間内で契約を解除することは原則としてできません。
関連記事:有期労働契約途中解約のルール
雇用契約書のサンプル
パート・有期労働契約の満了と更新
契約期間の満了
契約した期間が満了すれば当然に退職になります。これを雇い止めといいます。ただし、雇い止めが認められないこともあります。
関連記事:雇い止めのルール
有期雇用契約は5年に達したときは無期雇用契約に転換されます。また、パート従業員や有期雇用従業員について、通常の労働者への転換を推進するための措置を講じなければなりません。
関連記事:無期労働契約への転換
パート・有期雇用契約を更新する
継続して働いてもらうことを更新といいます。パート・有期労働契約を更新するときは新しい雇用契約書を締結しましょう。同じ労働条件で更新するとしても、重要な労働条件である「契約期間」が変わるのですから、あらためて雇用契約書の締結をする必要があります。
更新時には必ず一定の時間を確保して面談を行いましょう。雇用契約書に署名押印だけを求めるような、形式的な契約更新をしていると、契約書に「期間の定めがあり」と明記されていても、契約が形骸化しているとして「期間の定めのない契約」とみなされることがあります。
パート。有期雇用契約を更新する場合でもしない場合でも、30日以上前に当該労働者に通知しましょう。ということは、契約満了日の2か月ころには更新するかどうかを判断することになります。
特に、1年を超えて継続して雇用している者、3回以上契約更新を行っている者に対して契約更新をしない旨を伝える場合は必ず30日以上前でなければなりません。
雇用管理上必要な措置
パート・有期契約従業員対象の就業規則
正社員向けの就業規則を適用するのは無理があります。パート従業員、契約社員など就業形態別に就業規則を作成するべきです。
関連記事:就業形態別に就業規則を定める
パート・有期雇用従業員の待遇
短時間勤務や有期雇用であることを理由として、正社員との間に不合理な待遇差をつけることは禁止されています。待遇ごとの性質・目的に照らして、①職務内容、②転勤・異動範囲、③その他の事情から、具体的に理由を説明できることが必要です
関連記事:雇用形態による待遇格差の問題
社会保険と労働保険
一定の条件を満たすパート・有期雇用労働者を厚生年金保険と健康保険に加入させなければなりません。
関連記事:短時間労働者の社会保険加入条件
労災保険は全ての有期雇用労働者に適用されます。一定の条件を満たすパート・有期雇用労働者を雇用保険に加入させなければなりません。
関連記事:雇用保険の加入条件
説明義務
事業主は、パートタイム従業員や有期雇用労働者を雇い入れたとき、または説明を求められたときは、実施する雇用管理の改善措置を説明しなければなりません。
関連記事:パート等雇入れ時の雇用管理措置の説明
相談体制の整備
パート・有期雇用従業員の就業上の相談に対応する体制を作らなければなりません。
短時間・有期雇用管理者
パートタイム・有期雇用労働法第17条により、パートタイム労働者・有期雇用労働者を常時10人以上雇用する事業所には、短時間・有期雇用管理者を選任する努力義務があります。
関連記事:短時間・有期雇用管理者を選任する
紛争解決
パート従業員や有期雇用従業員との紛争については、パートタイム・有期雇用労働法などの法令の定めに沿って対応しなければなりません。
関連記事:個別労働紛争の解決手続き
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